【検証】オールドレンズにはフルサイズ一眼カメラがおすすめ?APS-Cとの違いを2枚の写真で比べてみた。

フルサイズかAPS-Cか

オールドレンズを持っている方、これから購入を検討されている方、お手持ちのデジタル一眼カメラはどんな種類を使われていますか?
実はカメラの「センサーサイズ」の違いにより、オールドレンズの表現力が大きく左右されてしまうことをご存じでしょうか。

プリン

センサーサイズって聞き慣れないけど…

フォトあ

簡単に言うと、その大きさにより「写真の面積」が大きく変わってきます。

  1. 「APS-Cサイズ」のカメラを持っているけど、フルサイズと何が違うの?
  2. フルサイズって何が「フル」なの?
  3. 最新機種なら性能が良いので気にしなくてもいいのでは?

結論から言ってしまうと、オールドレンズに全力を発揮させるためには「フルサイズ」が断然おすすめです。

目次

はじめに

フルサイズのカメラがおすすめの理由は、「プロも使っているし何となく凄い感じがする」といった曖昧な理由ではなく、ハッキリした理由があります。

  • オールドレンズが想定している写真の画角は、”フルサイズ”が相当する
  • APS-Cサイズのカメラでは、フルサイズ写真の周囲はカットされ”トリミング”と同じ状態となる
  • APS-Cサイズでは、レンズに記載の「焦点距離」も「F値」も再計算が必要

…伝わりましたでしょうか。少し大雑把な言い方かもしれませんが、現在主流の一眼カメラと交換レンズにおいて、上記の理由は概ね当てはまります。

理由❶は、実は正しい言い方ではありません。「フルサイズ」は、デジタルカメラ用語で、フィルムカメラ時代にはありません。オールドレンズがオールドではない時代、つまりフィルムカメラが当然だった時代に一般的だった「35mmフィルム」の面積と、ほぼ同等のイメージセンサーを”フルサイズ”と言います。つまり、フィルムで現像した写真とほぼ同じサイズでデータ化できるのです。

上記3つの理由に加えて、おすすめするのには、もうひとつの理由があります。

初期のフルサイズデジタル一眼レフカメラが中古市場で相場が下がり、購入しやすくなっていること。

こちらは当ブログのテーマに沿った理由になりますが、ひと昔前までプロのカメラマンやフォトグラファーの方々が愛用していたフルサイズ一眼カメラが、中古市場にて格安で流通しているのです。新品で数十万円だったものが、中古市場では一番安いもので一万円台になっています。
メーカー保証期間を終えていたり、最新機種の持つ性能や斬新な機能がなかったりというデメリットは多々あるものの、本格的な写真を撮ることが可能な機種を、趣味のレベルであっても買ってみようかなと思えるお値段まで下がっているのは、この時代ならではの楽しみでもありますよね。

私も「APS-Cサイズ」のカメラは持っていますが、オールドレンズを使うことが多いので、どうしても「フルサイズ」の出番が多くなります。
私自身、中古で入手したカメラとレンズがメインです。

フォトあ

その良さをたくさんの人に知ってもらいたくて、ブログ書いてます🔥

では、実際に「フルサイズ機」と「APS-C機」それぞれで撮影した写真を見てみましょう。

同じレンズ・同じ場所でフルサイズとAPS-Cで撮影した写真の比較

ここまで違う!?比べて実感。

まずは、こちらの2枚の写真を見比べていただきたいと思います。

上の写真が「フルサイズのカメラ+55mm単焦点レンズ」。
下の写真が「APS-Cサイズのカメラ+55mm単焦点レンズ」。
全く同じレンズを使い、全く同じ場所からカメラだけを交換して撮影しています。

CANON EOS 5D + SMC TAKUMAR 55mm f1.8
CANON EOS 5D + SMC TAKUMAR 55mm f1.8
EOS 20D + SMC TAKUMAR 55mm f1.8
EOS 20D + SMC TAKUMAR 55mm f1.8

これが、カメラだけを交換して撮影した結果です。APS-Cサイズのほうは、かなり猫に接近したような距離感となりました。”全く同じレンズ”にもかかわらず、これだけ「撮影範囲」に差が発生するのです。
APS-Cサイズの写真が拡大表示されるように見えるため、「フルサイズ換算で1.6倍(=キヤノンの場合)になる」という言い方をするわけですね。

「フルサイズ換算で1.6倍になる」とは?
キヤノンの場合、「APS-Cサイズのカメラ+50mmのレンズ」と「フルサイズのカメラ+80mmのレンズ」で、画角(撮れる写真の範囲)が同じになるという意味です。
※キヤノン以外は基本的に「1.5倍」とお考えください。

一見ズームしたように見えますが、撮影した位置は同じで、単焦点レンズのためズームはできません。

上記作例は明暗さが出てしまったのと、ネコが動いてしまっているため、少しわかりづらいかもしれませんね。
そこで、全く同じ条件で撮影したものと仮定して、フルサイズカメラの撮影結果を黄色枠、APS-Cカメラで撮影した場合の結果を以下緑色の枠で表現してみました。

full-size, aps-c

APS-Cサイズのカメラはレンズの持つ描写力が、かなり大きな範囲で切り捨てられていることが分かります。
一般的な言い方に直せば「1.6倍”望遠側”になる」でしょうか。

APS-Cのカメラはボケにくい」という言葉を聞いたことがないでしょうか。
実際は「ボケにくい」のではなく、フルサイズでは豊かに広がっているボケの範囲が、APS-Cサイズでは写真の範囲外になってしまうのです。
単純に「1.6倍」なら、ボケる範囲も変わらないように錯覚しますが、実際は「切り取り」してから「拡大」するイメージです。

APS-Cサイズのカメラでフルサイズ設計のレンズを評価してはいけない

ということを、いつも心の片隅に置いておいてください。
そのため、各社とも「APS-Cサイズ専用設計のレンズ」を用意しています。

APS-Cでオールドレンズは評価できない

APS-Cサイズでも、マウントアダプターさえフィットすれば撮影は可能ですが、これだけ広い範囲が犠牲になるということは、(フルサイズ対応)レンズの部分的な能力しか引き出せないということを意味します。
ボケ味が魅力的なレンズと聞いて、APS-Cサイズのカメラで撮影した結果「このレンズ、たいしたボケ味じゃないじゃん…」となるのは、実はセンサーサイズによるものなのです。
オールドレンズをAPS-Cサイズのデジタル一眼カメラで正当な評価はできない、ということを認識していただければ幸いです。

「フルサイズ・APS-C論争」「もうフルサイズは要らない」という検索キーワードを見かけますが、実際に体験しないまま、そういう記事や意見だけを頼りに判断するべきではない、と私は考えます。

フィルムカメラ時代に「ハーフサイズカメラ」という、1枚のフィルムを半分ずつ、2回に分けて撮影できるカメラが存在しました。お察しかと思いますが、高額なフィルム代を節約するために開発されたカメラです。半分ということは、その分レンズの性能を犠牲にすることになります。
APS-Cサイズは、このハーフサイズカメラに似ています。デジタル一眼でフィルムの役割を担う「撮像素子」が高価であることから、デジタル一眼カメラの普及を急いだメーカーが考えた方法です。その結果、ハーフサイズカメラ同様、フルサイズ設計のレンズの性能は犠牲になってしまいました。

初めてフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「EOS 5D初代」を手に入れ写真を撮ったとき、得も言われぬ「解放感」のような感覚がしたことを覚えています。子供のころ、成長に伴い大きな服に変えたとき。親が大きな家に引っ越したとき。大きな車に乗り換えたとき。何かをサイズアップした時に感じた解放感といいましょうか。
これは個人の感覚なので一概には言えませんが、きっと「あ、違う…!」といったような気持ちになるはずです。

フルサイズを今お勧めできる、2つの理由

当ブログでは、上述のように「オールドレンズ」など、フィルム一眼カメラ時代のレンズ=そもそも35mmフィルム=フルサイズが前提だったころのレンズをメインで扱うため、フルサイズ一眼カメラに触れることが多いです。

ただし、「フルサイズの”最新”機種」はかなり高額となり、おいそれと手を出せません。
ですが、以下2つの理由から、ムリしなくてもフルサイズを手にすることができる時代になっています。

中古市場でフルサイズのデジタル一眼レフカメラが出回っている

1つ目の理由は、当ブログ最大のテーマでもある「お金を掛けずにデジタル一眼を楽しむ」ことができる、「中古市場にお求めやすくなったフルサイズのデジタル一眼レフカメラがごろごろしているから」です。

かつてはプロも第一線で使用した上級カメラが、数万円で手に入るなんて、夢のような話だと思いませんか?
もちろん、メーカー保証が切れている・最新機種の性能には劣るなど、デメリットも考慮しないといけないですが、フルサイズは強烈なアドバンテージと、私は考えます。
「APS-C」サイズの写真に慣れている状態で、初めて「フルサイズ」で自ら撮影した写真を見たとき、ハッとするような、大きな違いがあることを実感できるはずです。

ミラーレスカメラ界ではフルサイズのエントリー機が爆誕!

でも、もうミラーレス一眼しか買う気が起こらない…という方もご安心(?)ください。
ミラーレスの世界でも、フルサイズ製品の廉価版が発表されたり、中古市場で価格がこなれてきたりしているのです。
それが2つ目のお勧めする理由です。

今、ミラーレスカメラは各メーカーさん、力の入れようが半端ないです。
余談ですが、私がデジタル一眼レフカメラを始めたとき、自分が最初に買った機種が「APS-Cサイズ」という種類だと後から知ることとなりました(まずはここで愕然としたわけですが)。では「フルサイズ」はどうなんだろう?と見まわしたとき、「高い!買えない!」という状況でした。

しかし”ミラーレス界”は、それこそあっという間にフルサイズ機が、手の届く価格まで下がったのです。
キヤノンがリリースしている「EOS RP」は、一時期、新品でも実勢価格で10万円を切っていました。

フォトあ

EOS RPは買っておけばよかった、と後悔しています…

今は程度の良い中古品が10万円前後です。本体だけでこの価格なので、レンズを揃えようと思うと激安とまでは言えないですが、デジタル一眼レフのフルサイズでは考えられない価格設定です。

まさに「新品のフルサイズは高い」という固定観念が覆されたような瞬間でした。
もちろん、低価格のものはエントリー機種なので、例えば「本体に手ぶれ補正機能がない」など、機能的に少し目をつむる必要はありますが、デジタル一眼レフのほうは基本的に手ぶれ補正機能はないため、そこまでデメリットではないように思います。

今から「APS-Cサイズのダブルズームレンズキット」を検討されている方は、ぜひ比較候補としてチェックしてみてください。

APS-Cを(強くは)おすすめしない3つの理由

改めて、なぜ「APS-Cサイズ」をおすすめしないか。もう少し踏み込んでみたいと思います。
価格もお手頃で種類も豊富、デジタル一眼カメラの主流ともいえる「APS-C」機をおすすめしないのは勇気が要りますが(私も所有しておりますし)、オールドレンズ≒フルサイズ設計のレンズを使うことを想定して、その理由を考えてみます。

フルサイズ用のレンズの画角が狭くなるから

これは、例に挙げた写真のとおりです。

私が最初に購入したカメラは「EOS KISS DIGITAL (初代)」でした。そのときに合わせて購入したレンズは、「EF50mm f1.8 ii」。低価格なのに明るいレンズでよくボケるため、デジタル一眼カメラにハマるきっかけとなる「キヤノンの撒き餌レンズ」として有名でした。

この組み合わせで最初に写真を撮ったとき、「風景が近い!!」でした。
遠くに見えている建物をファインダーで覗くと、思っているより画面いっぱいになり、まるで望遠レンズのように近く感じたのです。

こちらの作例は、街全体を撮ろうとファインダーを覗いたら、目の前の家屋がドン!と画面を占めていて驚いたという、思い出の一枚です(笑)

Tokoname-shi, Aichi, JAPAN
CANON EOS KISS DIGITAL + EF50mm f1.8ii

画角だの焦点距離だの単焦点だの、カメラ用語を何も知らずに始めている状況で、それまでレンズ一体型のデジタルズームカメラしか使ったことがなかった自分にとっては「不便だ…」以外の言葉が見つかりませんでした。

その後、いろいろ調べて勉強した結果、「購入したカメラはイメージセンサーが”APS-Cサイズ”というタイプで、フルサイズのカメラに換算すると画角が1.6倍になる」ということを理解しました。
しかし「1.6倍」という言い方は、私の中ではしっくりきません。
2枚の写真のとおり、どうしても「APS-Cサイズはトリミングされる」という感覚です。

APS-Cの焦点距離はフルサイズ換算で1.6倍…の計算が面倒

APS-Cに対するレンズの焦点距離、基本的な説明はこれですよね。
簡単に言うと、「フルサイズ用のレンズをAPS-Cサイズのカメラに取り付けると1.6倍望遠側になる」
ということですが、いちいち計算しないといけないのは面倒です。
焦点距離がフルサイズで「50mm」の場合、「80mm」になります。
ちなみに、「1.6倍」はキヤノンの場合であり、ニコンでは「1.5倍」です。

私はこの言い方があまり好きではありません。
APS-Cサイズのカメラはフルサイズ用の写真の周囲を「面積の半分以上トリミングして拡大している」
というほうが、事実に近いのではないでしょうか。
ただ、商品を売る側=メーカーが「周囲が削られる」なんて、ネガティブな伝え方をするはずがありませんね。

ここまで書いておいて、APS-Cをフォローしますと、「APS-C専用のレンズ」も超広角から超望遠まで、しっかりラインナップされているので、レンズもAPS-Cサイズで固める、という決意であればコスパのよいAPS-C道を極めるのも、ひとつの選択肢かな、とは思います。

私自身、キヤノンもニコンもAPS-C機を何種類か持っています。
中古市場であれば、カメラ本体が数千円から入手できてしまうというコスパの良さから、試してみたくなり、見つけたらついつい入手してしまうのです(笑)

オールドレンズは、どれも「フルサイズ」想定だから。

最後にして最大の理由は、この記事の総まとめとも言える「オールドレンズはフルサイズ」です。
フルサイズ想定も何も、フィルムカメラ時代は35mmフィルムが主流だったのですから当然です。

カメラを続けるうちに「ネットで人気のオールドレンズってどうなんだろう?」と試してみたくなったとき、フルサイズのデジタル一眼カメラであれば、余すところなくオールドレンズの性能を発揮できるのです。

EOS 5D Classic
廃墟とオールドレンズはよく合う!?

APS-Cサイズや、それ以下のカメラに取り付けると、周囲はトリミングされます。その分、レンズの魅力もトリミングされてしまうわけです。

デジタル一眼のセンサーサイズは、APS-Cよりさらに小さなオリンパスPENシリーズなどの「マイクロフォーサーズ」があります。
※記事もありますので、よろしければご参照ください。

まだまだ小さな、携帯カメラやコンパクトデジカメで使われる「1型」など、さまざまな種類が存在します。

まずは、フルサイズを選択してみるというのもひとつの選択肢です。
撮れる写真のサイズが大きい分、デジタル一眼カメラ・ライフも豊かになると、私は思います。
ただし、デジタル一眼レフの場合はカメラ本体が大きく、重いという点はデメリットと言えるため、想定される用途に合わせて決めることも大切です。

オールドレンズの準備については、以下の記事をご覧ください。

APS-Cという分かりづらいネーミングは意図的なものか

こちらはおまけコーナーです。あと少しだけ、お付き合いくださいませ。
APS-C」という言葉、分かりづらいと思いませんか?
センサーサイズの規格「Advanced Photo System type C」の略、だそうです。

センサーサイズをズバリ表現すると、「写真の素となる大きさ」です。
イメージセンサーは撮像素子とも呼ばれ、フィルムに代わってレンズから届く画像をデジタルデータ化する、デジタル一眼の心臓部とも呼ぶべき重要な箇所です。

また、センサーサイズのうち「フルサイズ」をズバリ表現すると「フィルムカメラのフィルムと同じ大きさのセンサー」となります。

そして、センサーサイズのうち「APS-C」を表現するなら「フルサイズの半分以下の面積のセンサー」となるでしょうか。デジタル一眼レフが登場するまでは、主流は35mmフィルム、つまり「フルサイズ」の想定しかなかったということになります。※ここでは「中判」「ハーフサイズ」等は省略

それにしても、分かりづらい話だと思います。
初心者が、初めてデジタル一眼カメラを買うときには「センサーサイズ」なんて意識することも無いでしょう。
商品のスペック一覧の中にひっそりと書かれていることが多いし、機種の型番で判別がつくものでもありません。
CANONのデジタル一眼レフを例に挙げると、”5D”と”6D”はフルサイズですが、”7D”はAPS-Cサイズです。
普通に考えたら「一桁Dシリーズの最新版」と勘違いしてしまいそうですよね。
ニコンでも、”D600″、”D700″はフルサイズで、”D300″はAPS-Cサイズとなります。

もし、万人に理解してもらいたいのであれば、フィルムと同じフルサイズは「フィルムサイズセンサー」、APS-Cサイズは「ハーフサイズセンサー(実際は半分以下ですが)」とでも命名したはずです。

そして、これがデジタル一眼の世界に足を踏み入れた人を混乱に陥れていると思います。

最もよく見かけるのが、繰り返しになりますが「フルサイズ換算」という言葉。
メリットのように書かれることはあっても、「トリミング」とは決して書かれておりません。
「望遠に強い」みたいな言い方をします。

意識しなければ済む話かもしれないですが、知っておいて損はないはず。
センサーサイズの知識」はデジタル一眼カメラを始めるにあたり、非常に重要なポイントとなります。
ぜひ、本ブログ以外でもメーカー公式サイトなども参考にしながら、知識を深めてみてください。

その他、当ブログはスローペースではありますが、記事を随時更新中です。デジタル一眼レフ、オールドレンズを中心に、ちょっとだけミラーレス一眼カメラも経験を交えて記事にしております。
お越しいただいた方に、少しでもお役に立てれば幸いです。

長い記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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