「オールドレンズを始めてみたいけれど、高いレンズはいきなり買えない」
「ニコンの古いレンズが良いと聞くけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」
そんなことを思いながら、途方に暮れていませんか?
もしあなたが、SONY α7などのミラーレス一眼カメラを既にお持ちなら、朗報です!
マウントアダプターさえあれば簡単に使える、市場で「捨て値」のような価格で転がっている「隠れた銘玉」が存在するのです。
それが今回紹介させていただく「Nikkor-H Auto 50mm F2」という、Fマウントの”非Aiタイプ”の単焦点レンズです。
実は、古いニッコールのレンズの中には、「デジタル一眼レフ」では使えない、本家ニコンのユーザーですら敬遠する”非Aiタイプ”と呼ばれる種類があるのですが、ミラーレス一眼であれば問題なく使えてしまいます。
私自身、このレンズを数千円のジャンクとして入手しました。しかも、フィルム一眼レフ「Nikomat EL」のオマケで付いてきたレベルのものでした。
実際に街で撮ってきた作例とともに、その実力と「安さの秘密」を余すことなくレビューします。
これを読み終わる頃には、あなたも千円札を数枚握りしめて、リサイクルショップへ走りたくなっている…かもしれません(笑)。
なぜ「非Ai」のニッコールはこんなに安く売られているのか?
オールドレンズを探していると、同じ「50mm」なのに、値段がピンキリであることに気づくと思います。特にニコンのレンズは、「Ai」とか「非Ai」「Ai改」といった謎の記号で区別されています。
実はここに、安さの秘密があります。
本家ニコンのデジタル一眼レフに「付けられない!」悲しい運命
ニコンのマウントは、ミラーレス一眼を除いて「不変のFマウント」と言われ、昔のNIKKORレンズ=オールドニッコールも今のデジタル一眼レフカメラにそのまま付けられるのが売りです。しかし、この「非Ai(1977年以前のレンズ)」だけは例外なのです。
こちらが実際のレンズの写真です。

レンズから飛び出した「カニ爪」と呼ばれる、露出計連動装置。カニ爪がこの形状のレンズが「非Ai」タイプです。
絞り値を伝える仕組み=Ai方式が採用されてから、現在のニコンのデジタル一眼レフ(Nikon Dfなど一部の機種を除く)にも採用されている「Ai連動ピン」と物理的に干渉してしまうのです。無理やりねじ込むと、カメラ側の機構を破壊してしまう恐れすらあります。
そのため、多くのニコンユーザーはこのレンズを使いたくても使えません。使うには本体と干渉しないようにレンズを削る「Ai改造」という荒技が必要になります。
かつてはニコンが公式に対応していた「Ai改」を、自らの手で行うのです。ネットで検索すれば、猛者の皆様が手順を公開しておりますので、自信がある方は挑戦してみてください✊
需要が少ない=価格が暴落
「そのままではデジタル一眼レフに付かない」
この致命的な理由により、非Aiレンズは中古市場での需要がガクンと下がります。カビやクモリがなくても、数千円、場合によっては1000円台の「ジャンク扱い」でリサイクルショップの片隅に置かれたカゴに投げ込まれていることも珍しくありません。
しかし、これはレンズの性能が悪いから安いのではなく、「使い手が限定される」から安いだけなのです。
ここが大きなポイントです!
ミラーレスなら関係ない!不遇の銘玉を救出しよう
ここで登場するのが、SONY α7シリーズをはじめとする「ミラーレス一眼」です。
ミラーレスユーザーにとって、上記の「ニコンの一眼レフに付かない問題」は、全く関係がありません。

マウントアダプターが全てを解決する
ミラーレスカメラでオールドレンズを使う場合、間に「マウントアダプター」を挟みます。このアダプターが干渉部分をうまい具合に避けてくれるため、非AiだろうがAiだろうが、何の問題もなく装着できてしまうのです。
つまり、「仕組みが原因で安くなっている当時の名作レンズを、ミラーレスユーザーは安価で堪能できる」という、なんともお得な状況が生まれているのです。これを利用しない手はありません。

【レビュー】Nikkor-H Auto 50mm F2 の外観と操作感
今回私が手に入れたのは、「Nikkor-H Auto 50mm F2」。1960年代から70年代にかけて製造された、ニコンのスタンダードな標準レンズです。
プラスチックにはない「鉄の塊」感
まず手にして驚くのは、その質感です。現代の軽量なプラスチック製レンズとは違い、ひんやりとした金属の鏡筒。ずっしりとした重み。
ピントリングを回す時の感覚は、今のAFレンズでは全く異なります。絞りリングも新鮮に感じられると思います。
こちらの写真は同時に入手したフィルム一眼レフカメラ「Nikomat EL」に装着した状態。

やはりお互いのデザインが合っていて、いいですね!
部屋に置いておくだけで、素敵なインテリアになっちゃいます。
F2 というスペックは「暗い」のか?
ちょっと細かい話になりますが、絞り最大開放値について。このレンズはF2が最大です。
「いや、オールドレンズならF1.4、少なくともF1.8は欲しい」と思うかもしれません。一般的に「明るい単焦点レンズ」と言えば「F1.8」から、というイメージですよね。確かにより明るいほうが魅力的ですが、F2にも大きなメリットがあります。
- 解像度が安定している: F1.4などの大口径レンズは、設計がタイトで、最大開放では少しソフトになるものもあります。F2であれば、無理のない設計で、開放から実用的な写りをします。
- 軽くてコンパクト: 巨大な前玉がないため、α7に付けた時のバランスが非常に良いです。スナップ撮影で一日持ち歩いても苦になりません。
- 安い: これが一番かもしれません(笑)。明るいほど高くなるのは必然です。
とにかく気軽に手に入れられて、きちんと良い画が撮れる撮れるレンズとして、本当に最初のオールドレンズとしてもおすすめです。
【作例】開放のとろけるボケと、絞った時の強烈な解像度
それでは、実際にSONY α7に装着して撮影した写真をご覧ください。
JPEG撮って出しのため、撮影した後に何も手を加えておりません。
また、画像は圧縮されている旨をご留意願います。
① 開放F2の世界:優しく滲むボケ
作例は全て絞り開放、F2で撮影したカットです。




いかがでしょうか?「F2ではボケが弱い」なんてことは全くありません。
背景がとろけるように滲み、被写体が浮き上がってくるような立体感。ピント面は芯がありつつも、カリカリしすぎない柔らかさがあります。この「湿度」を感じるような写りは、オールドレンズならでは!です。
② 逆光:補正されないというメリット
現代のレンズはコーティングが優秀で、デジタルでしっかり補正もされるため、逆光でも綺麗に写りすぎてしまいます。しかし、オールドレンズは違います。
今回の作例にはありませんが、太陽に向けてシャッターを切ると、盛大なフレアやゴーストが現れます。これを「性能が悪い」と捉えるか、「エモい表現」と捉えるか。好みがわかれるところではありますね。




③ 心象風景:オールドレンズの醍醐味?
最新のカメラとレンズで、独特な味わい深い写真を撮るのは案外難しいものです。
美しく、再現性の高い写真が”撮れてしまうから”です。
私は本来「古いデジタル一眼レフ」と「オールドレンズ」の組み合わせが好きなのですが、今回のような”制約”がある場合はミラーレスカメラの出番です👍
加工せず、あっさりとレトロ感やノスタルジーを表現してくれるのが、オールドレンズなのです!




本当はもっと解像力のあるレンズですが、好みが出過ぎていて申し訳ないです💦
ニコンのレンズは昔から「解像度」に定評があり、50年以上前のレンズで既に実力者です。ビルの窓枠やコンクリートの質感まで、恐ろしいほどシャープに描写してくれます。
「開放で遊んで、絞って記録する」。一本で二度美味しいレンズです。

④ 街撮り:少しフィルムを感じる
…もしかしたら街並みのせいかもしれませんが💧
淡い雰囲気をしっかりと表現してくれているように思います。




以上、作例でした。
その他、補足。
舞台は「柳ケ瀬商店街」
岐阜県岐阜市にある柳ケ瀬商店街は、美川憲一が唄う「柳ヶ瀬ブルース」でも有名です。
昭和に賑わい、平成には活気が失われるも、令和の今再びレトロ感を求めて若者が集まりつつある、それはそれは大きな商店街です。
是非一度、足を運んでみてください!きっと街の魅力に憑りつかれますよ✨
α7での撮影を助ける機能
オールドレンズマニュアルフォーカス(MF)でのピント合わせが不安な方もいるかもしれませんが、α7なら簡単です。
- ピーキング機能: ピントが合っている部分に色がついて教えてくれる。
- ピント拡大: ボタン一つで拡大表示して、厳密にピントを追い込める。
これらのおかげで、視力に若干難ありの私も(要するに遠視です💦)、しっかりピントの合った写真を撮影できています。
機材は「α7初代」で大変古いのですが、今でも十分使えるミラーレス一眼カメラです。
カメラ本体の記事もUPしてますので、ぜひご訪問ください。

カメラのイメージセンサーを意識するべし
今回使用した「α7」は、イメージセンサーが「フルサイズ」です。
これ、オールドレンズと組み合わせる大きな理由のひとつになります。
もしお手元のミラーレス一眼カメラが「APS-C」だった場合、写真の範囲が狭くなる=望遠寄りになり、ボケの範囲もフルサイズより小さくなるのでご注意ください。
オールドレンズは基本的にフィルム一眼レフ時代のものになるのですが、この時代の「35mmフィルム」の大きさと「フルサイズイメージセンサー」の大きさが同じなので、当時のままの画角で撮影できる、というわけです。
センサーサイズがなのか分からない、という場合は一度検索してみましょう。
「カメラの型番を調べる⇒イメージセンサーを調べる⇒APS-C」
だった場合、望遠寄りの写真になるということです。
OLYMPUSのPENシリーズであれば「マイクロフォーサーズ」で、また違うサイズです💦
イメージセンサーの違いについて、詳しくはこちらの記事にまとめておりますので、ぜひご一読ください!

まとめ:オールドニッコールで始めるオールドレンズ生活
F2でいい!非Aiでもいい!
今回ご紹介した「Nikkor-H Auto 50mm F2」。
「F1.4じゃないから」「古い非Aiだから」という理由でスルーされがちなレンズですが、実際に使ってみると、そのポテンシャルの高さに驚かされるはずです。
そもそもレンズとしての評価は今でも高いので当然ですね😅
このレンズを皮切りに、オールドニッコールの世界に足を踏み入れるのはいかがでしょうか。
そんな私は既にオールドニッコールを複数所有しておりますので、今後記事を増やしていく予定です👍
今回のポイント4点
- 非Aiレンズは、デジタル一眼レフで使えないため格安で入手可能。
- SONY α7などのミラーレスなら、マウントアダプター経由で問題なく使える。
- F2は無理のない設計で、ボケと解像度のバランスが良好。
- 何より、1000円〜数千円でこの写りが手に入る喜びは撮ってみれば分かります。
もし、リサイクルショップのジャンクコーナーや、ネットオークションでこのレンズを破格値で見かけたら、ぜひ”救出”してあげてください。
「オールドレンズって、これで十分すぎるほど楽しい!」
最初のシャッターを切った瞬間、いきなりそう感じてしまうかもしれません。
【今回使用した機材】
- レンズ: Nikon Nikkor-H Auto 50mm F2(非Ai)
- マウントアダプター: K&F Concept Nikon F – Sony E
- カメラ(DSLR): SONY α7 (初代)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


