はじめに:押し入れの片隅で眠るレンズに、もう一度光を。
「実家の押し入れを整理していたら、お父さんが昔使っていた古いカメラとレンズが出てきた」
「リサイクルショップで見た、金属製のレトロなレンズ。かっこいいけど、私の最新カメラには付かないよね…」
「今持っているカメラのメーカーとは違う、あの憧れのレンズを使ってみたい!」
カメラを趣味にしていると、一度はこんな風に思ったことがあるのではないでしょうか?
カメラとレンズには、それぞれのメーカーが決めた接続口の規格、「マウント」があります。ニコンにはニコンの、キヤノンにはキヤノンの、ソニーにはソニーの形があり、パズルのピースが合わないように、異なるマウントのレンズは装着できません。
同じメーカーでも、ミラーレスとデジタル一眼レフではそれぞれ形が異なり、互換性はありません。
…しかしそれは「通常は」のお話です。
その「装着できない」という”常識”を覆し、メーカーの垣根も、時代の壁も飛び越えてしまう夢のようなアイテムが存在します。
それが、今回のテーマである「マウントアダプター」です。
マウントアダプターを使えば、最新のミラーレス一眼で、50年前のオールドレンズの独特な描写を楽しめます。あるいは、異なるメーカーの高性能レンズを、あなたの愛機で使うことだってできるのです。
しかし、いざマウントアダプターを探し始めると、「電子接点」「フランジバック」「ヘリコイド」「純正」「サードパーティ」……と、聞き慣れない専門用語のオンパレードで、そっとブラウザを閉じてしまった経験はありませんか?
大丈夫です✨
この記事では、プロの視点からマウントアダプターの種類を整理し、「どんな時に、どれを選べばいいのか」を、初心者の方にも分かりやすく、徹底的に解説します。
さあ、あなたのカメラライフの可能性を無限大に広げる、マウントアダプターの世界へ飛び込みましょう!
そもそも「マウントアダプター」ってどんな仕組み?
まず基礎知識として、マウントアダプターが何をしているのかを簡単に理解しておきましょう。
マウントアダプターは、「カメラボディ」と「レンズ」の間に挟む、ただの筒状のリングです。片方はカメラボディのマウントに合う形、もう片方は取り付けたいレンズのマウントに合う形をしています。
これによって、物理的に装着できないものを装着可能にする、いわば「変換プラグ」のような役割を果たします。

なぜ「ミラーレス一眼」が有利なの?
実は、マウントアダプターを介してオールドレンズを使うのは、ミラーレス一眼カメラが主流となった今、やりやすくなり、盛んになっています。
・・・なぜだか分かりますか?
これには「フランジバック」と「ミラー干渉」いう言葉が関係しています。また専門用語が出ましたね💦
フランジバックとは、レンズの取り付け面(マウント面)から、カメラ内部のイメージセンサー(写真を生成する心臓部)までの距離のことです。
ミラー干渉とは、ミラーレス(ミラーが無い)カメラとは無縁ですが、一眼レフ(レフとはミラーのことです)はファインダーにレンズが見ている風景を送る必要性から、ミラーの下部が手前になるよう斜めに設定されているため、レンズの後ろ側が当たってしまうことを言います。

- 一眼レフカメラ: 内部に鏡(ミラー)があるため、フランジバックが長い(センサーまで遠い)。
- ミラーレスカメラ: ミラーがないため、フランジバックが短い(センサーまで近い)。
レンズは、マウントの規格ごとに、フランジバックに合わせてピントが合うよう設計されています。
フランジバックが短いミラーレスカメラは、マウントアダプターという「筒」を挟むことで距離を長くして、昔の一眼レフ用の長いフランジバックを再現しやすいのです。
逆に、フランジバックの長い一眼レフカメラに、ミラーレス一眼カメラ用のレンズを装着することは、もしマウントアダプターがあったとしても、物理的に距離が足りないため、基本的にはできません(虫眼鏡で、もう少し近づけたら焦点が合うのに「これ以上近づけたらダメ!」と制限されているような状態です)。
【ポイント】
マウントアダプターは、基本的に「フランジバックが短いカメラ(ミラーレス)」が、「フランジバックが長いレンズ(一眼レフ用やオールドレンズ)」を受け入れるためのアイテムだと覚えておきましょう!
デジタル一眼レフでも全く使えないわけではありません。「一部のレンズがNG」といった感じです。
M42マウントに特化した記事をUPしておりますので、ぜひご一読ください!

機能で選ぶ!「電子接点」のあり・なし
マウントアダプターの種類を分ける最も大きな要素が、この「電子接点」です。
電子接点とは、主に「オートフォーカス」に関わり、無ければマニュアル=手動でピントを合わせなければなりません。他に、カメラ側に「今何のレンズを使っているか」の信号を送り、レンズに合わせた補正をするなど、デジタル時代には重要な役割を果たしています。
当然、これが有るか無いかで、価格も使い勝手も大きく変わります。
① 電子接点あり(高機能タイプ)

アダプターのマウント面に、金色の小さな端子(チップ)が並んでいるタイプです。これにより、カメラボディとレンズが電気的に通信を行います。
- 最大のメリット:オートフォーカス(AF)が使える!
これが最大の魅力です。特にメーカー純正のアダプターであれば、最新のレンズとほぼ遜色ないスピードと精度でAFが動作します。瞳AFなどの高度な機能が使えることもありますが、制約がある場合も少なくありません。 - その他のメリット:
- 絞り(F値)の制御:カメラ本体のダイヤルで絞りを変えられます。
- Exif情報の記録:撮影データに「どのレンズで、どんな設定で撮ったか」が記録されます。後で写真を見返す時に便利です。
- ボディ内手ブレ補正との連動:カメラ側、もしくはレンズ側に手ブレ補正機能があるとき、ほとんどの場合に有効となるはずです。※必ず機種ごとに確認するようにしましょう
- 価格帯:高価(1万5千円~4万円程度が中心)。
- 向いている用途:
- 同じメーカーの「一眼レフ用のレンズ資産」を、快適にミラーレス一眼で使いたい人。
- 動体撮影など、AF性能が必須なシーンを撮ることが多い人。
② 電子接点なし(マニュアルタイプ)
電気的な仕掛けが一切ない、金属(またはプラスチック)の単純な筒です。構造がシンプルなので、非常に安価に手に入ります。
- メリット:とにかく安い!
2,000円〜5,000円程度で手に入るものが多く、気軽に試せます。 - デメリット(というより特徴):すべてがマニュアル操作になる
- ピント合わせ:手動です。レンズのピントリングを自分で回して合わせます。
- 絞り調整:カメラではなく、レンズ側に絞りリングがついている必要があります。手動でカチカチと回して調整します。
- Exif情報:当然ですがレンズ名は記録されません。(焦点距離を手動で入力できるカメラもあります)
- 向いている用途:
- オールドレンズを楽しみたい人。(そもそもオールドレンズには電子接点がないため、このタイプ一択です笑)
- ゆっくりと一枚一枚、ピントを合わせる時間を楽しみたい人。主に静物撮影ですね。
【体験談:マニュアルフォーカスの楽しさ】
「えっ、手動でピント合わせなんて難しそう…」と敬遠しないでください。最近の新しいミラーレス一眼カメラには、ピントが合っている部分を色付きで表示してくれる「ピーキング機能」があります。もし無かったとしても、モニターでピントが合った位置を拡大表示する機能がある機種も。これらを使えば、初心者でも驚くほど簡単に、しかも正確にピントを合わせられます。自分でピントを操る感覚は、一度味わうと病みつきになりますよ!
ただし動体撮影が難しいことに変わりはないので、ご注意ください・・・

3. メーカーで選ぶ!「純正」vs「サードパーティ」
次に悩むのが、「どこのメーカーのアダプターを買えばいいの?」という問題です。大きく分けて「カメラメーカー純正」と、それ以外の「サードパーティ製」があります。
安心と信頼の「純正メーカー製」
キヤノン、ニコン、ソニーなどが自社で出しているアダプターで、一番安心できる組み合わせです。
例えば、キヤノンの一眼レフ用レンズ(EFレンズ)を、キヤノンのミラーレス(EOS Rシステム)で使うための『EF-EOS R』などが代表的です。
- 特徴:
- 動作の確実性が最高。AF速度、精度ともに文句なしです。
- 防塵防滴などの作りがしっかりしている。
- 将来的にカメラのファームウェアがアップデートされても、ディスコンにならない限り使い続けられる安心感がある。
- 選び方:「手元にある同じメーカー製の一眼レフ用レンズを、ミラーレス一眼カメラでも使っていきたい」という場合は、高くても”純正品一択”です。ストレスを感じることなく、撮影に集中できます。
自由度とコスパの「サードパーティ製」
サードパーティー=カメラメーカー以外が販売しているアダプターです。国内メーカーであればSigma(シグマ)、海外ではK&F Concept、SHOTEN(焦点工房)、などが挙げられます。
- 特徴:
- 種類がとにかく豊富。「ソニーのミラーレス一眼カメラ(αEマウント)に、キヤノンの一眼レフ用レンズ(EFマウント)を付けてオートフォーカスも使いたい⇒後述のSIGMA MC-11」といった、マニアックな組み合わせも実現できます。
- 価格がピンキリ。安価な電子接点なしタイプから、純正クラスの超高機能タイプまで様々です。
- 注意点:
- 電子接点付きの場合、レンズとカメラの組み合わせによっては「相性問題」が発生し、AFが遅かったり、動作が不安定になるリスクがゼロではありません。
こちらは体験談を記事にしますのでお楽しみに💦
- 電子接点付きの場合、レンズとカメラの組み合わせによっては「相性問題」が発生し、AFが遅かったり、動作が不安定になるリスクがゼロではありません。
4. ここが面白い!ユニークなマウントアダプターの世界
実は、マウントアダプターの世界はもっと奥深いのです。ただつなぐだけじゃない、便利な機能を持った「進化系」をご紹介します。
① 「寄れない」悩みを解決!ヘリコイド付きアダプター
オールドレンズ、特にレンジファインダーカメラ用(ライカMマウントなど)のレンズは、「最短撮影距離が長い(あまり被写体に寄れない)」という弱点があります。例えば、最短で1メートル離れないとピントが合わない、といった具合です。これではテーブルフォトなどが楽しめません。
そこで登場するのが「ヘリコイド付きアダプター」です。
アダプター自体が伸び縮みする(ヘリコイド機構)ことで、レンズ本来の性能以上に、被写体にグッと近づいて撮影できるようになります。オールドレンズファンにとっては、もはや必須アイテムと言っても過言ではありません。
② マニュアルレンズがAFに!?魔法のAF化アダプター
「オールドレンズの描写は好きだけど、やっぱりマニュアルフォーカスは面倒くさい…」
そんなワガママな願いを叶えてくれる、夢のようなアダプターがあります。
ホンマかいな!というタイトルですが、TECHART(テックアート)が開発した「AF化アダプター」ということで、実在します。
これは、アダプター自体がモーターで前後に動き、レンズを物理的に動かしてピントを合わせてしまうという、力技かつハイテクな製品です。これを使えば、半世紀前のマニュアルレンズが、最新カメラで「ウィーン」と音を立ててオートフォーカスするようになります。
・・・が、ネットでは使用した方の様々な声が。
ある意味チャレンジではあるようですね。
私もいつか資金に余裕ができたら、試してみたいと思います🙇
5. 【実践編】あなたにピッタリのアダプターはこれだ!
最後に、具体的なシチュエーション別に、おすすめの選び方をまとめます。
ケースA:家にあった「キヤノンやニコンの一眼レフ用レンズ」を、同メーカーの最新ミラーレスで使いたい。
- 選択:純正の電子接点付きアダプター
- (例:キヤノンなら『EF-EOS R』、ニコンなら『FTZ II』)
- 理由:純正品ならではの快適なAFで撮影できます。もっとも失敗のない選択です。
ケースB:リサイクルショップで5,000円のレトロな「オールドレンズ」を買った!
- 選択:サードパーティ製の電子接点なしアダプター
- (例:K&F Concept製の対応マウントアダプター)
- 理由:オールドレンズはもともとマニュアル操作なので、高価な電子接点は不要です。数千円のアダプターで十分楽しめます。レンズよりもアダプターが高い、なんて事態も避けられます。
お手元のカメラと、購入したレンズそれぞれのマウントを調べて、対応するアダプターがあれば即購入しましょう♪
こちらはM42マウントの(オールド)レンズを、SONYのミラーレス一眼「Eマウント」に装着するためのアダプターです。
ケースC:ソニーのミラーレス一眼カメラを使っているが、キヤノンの一眼レフ用レンズを使いたい。
- 選択:シグマ製マウントコンバーター『MC-11』
- (※レンズとボディの対応状況は要確認)
- 理由:サードパーティ製レンズメーカー自身が作っているアダプターなので、動作の信頼性が高いです。実はキヤノン製のEFレンズも使用できますが、オートフォーカスは時間がかかる印象です(実体験より)。
まとめ:マウントアダプターで、写真の世界はもっと自由になる!
マウントアダプターは、カメラとレンズをつなぐ架け橋であり、時代を超えるタイムマシンのような存在です。
最初は「種類が多くて難しそう」と感じるかもしれません。でも、ここまで読んでいただいて基本はシンプルであることをご理解いただけたのではないでしょうか。
- 自分のカメラのマウントは何?(受け入れる側)
- 使いたいレンズのマウントは何?(付ける側)
- オートフォーカスは必要?マニュアルで楽しむ?(予算と相談)
この3つが整理できれば、あなたに必要なアダプターは自然と決まります。
まずは、気になった安価なオールドレンズ一本と、数千円のアダプターから始めてみませんか?
ファインダーを覗いた瞬間、最新レンズにはない柔らかな光や、独特のボケ味に、きっと心が躍るはずです。
さあ、あなただけの「じぶんカメラ」を探す旅に、出かけましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

