皆さんは、カメラの用語で「F値」をご存知でしょうか。
F値を理解すると、写真の表現力が各段に向上します。
もしかしたら、こんな経験はありませんか?
…いよいよミラーレス一眼カメラやデジタル一眼レフカメラなど、本格的なレンズ交換式カメラを購入して「いざ使おう!」と手に取ったものの、使い方が分からない…
説明書を読んだら、今度は”難解な専門用語”に心が折れてしまった…
そんなときは、何よりも最初に「F値」=絞り値を覚えるのがおすすめです。
ポカン…となった方もおられるかもしれませんが、とにかく「F値」を知ることで道は開かれます✨
手っ取り早く一眼カメラの魅力を引き出す、魔法の言葉。ぜひこちらの記事で掴んでください。
デジタル一眼カメラはとっつきにくい
ひとまずシャッター押せばOK!というスマホやコンパクトデジカメと違って、たくさんのダイヤルやボタンがこれでもか!と盛り込まれているのが「デジタル一眼カメラ」です。
ミラーレスカメラも一見するとシンプルですが、ボタンを押したり、液晶モニターをタップすると、ズラリといろいろなメニューが表示されますよね。
- F値どころか、ダイヤルやボタンがいっぱいありすぎてよくわからない
- 設定画面にもメニューがいっぱいあってよくわからない
- 説明書が分厚くて何をどうすればよいかわからない
- なので、いつも「オート」で撮ってます
オートモードはラクなのですが、実はデジタル一眼カメラとレンズの実力を十分引き出すことができません。
私自身、1台目を買ったとき何も読まずに撮り始めたので、一瞬で迷子状態になりました…
あぁ…皆さんというか自分の経験だったのね…汗
F値を操り、ボケを表現しよう
デジタル一眼カメラの醍醐味は、「絞り優先」モードを使って「F値」を小さくして、「ボケ」を生かした写真を撮ることです。と言い切ってしまうのは極論かもしれませんが、少なくともスマホやコンパクトデジカメでは成し得ない表現なのです。
こちらは少し極端な例ですが、絞り開放を最大にして撮影しています。背景は原型をとどめておらず全部丸ボケで、幻想的な写真となりました。
このような「ボケ」を強調した写真を撮るためには、少なくとも以下2つの手順が必須となります。
- オートモードを「絞り優先モード」に変更する
- 「F値」を一番小さな値にする
「F値」「絞り優先」「ボケ」
ここだけで、3つもキーワードが出てきましたね。
言葉は難しいようですが、設定方法は至ってシンプル。サクッと覚えて、すぐに実践しましょう!
デジタル一眼カメラ&レンズのチカラを最大限引き出す!
F値を覚えたら、今度は「F値を最大限に引き出す撮り方」を身につける必要があります。
それが「絞り優先モード」といって、その名の通り「絞り(F値)を優先するモード」なのです。
「絞りを優先??」という疑問が出てくると思いますが、オートモードではカメラが「良い感じ」に開いたり絞ったりするところを、撮影者の意思で手動操作ができる、という意味になります。
ということで、ここからは具体的に「絞り優先モード」を設定をしていきましょう。
カメラの世界は、文字だけではなかなかお伝えすることができません。
百聞は一見に如かず!ですね👍
「一眼」と名の付くカメラであれば、存在するモードです。「必ずある!」と言って差し支えない(はず)です。
また、どのメーカーでも共通のモードです。各社、名称に多少の違いはありますが、「絞り優先」の文字はあるはずです。
買ったら最初に覚えたい!5つの設定
では、いよいよ設定していきます。お手元にカメラとレンズをご用意ください!
想定しているシチュエーションは、撮影で一番多くなると思われる「お天気の日にカメラを持ってお出かけ」です。
写真の仕上がりは「明るく・ボケ量が最大」となるような設定です。
各設定に記載している《解説》は後から読んで、手順1から5まで、一気に進めていただいても大丈夫です!
撮れた写真が「おっ?いつもと違って何かいい感じ!」と、まずは実感していただけたら幸いです。
- メーカーにより、ダイヤル・ボタンの配置が異なります。
- 同じメーカーでも機種によりダイヤル・ボタンの配置は異なります。
- 同じ機能でも、メーカーにより名称が異なります。
- 電子ダイヤルは機種により複数の場合があります。
例: 上部シャッターの近く(メイン)、背面液晶の近く(サブ)
最初は”機械的に”でもOKなので、ダイヤル・ボタンの位置・表示される場所・設定値の目安を覚えていきましょう。外でいちいち分厚い取扱説明書や解説本を取り出さなくても済むようにして、シャッターチャンスを逃さないことが大切です。
設定1. モードダイヤルを「絞り優先」にする
- 撮影モードダイヤルを『Av(CANON) / A(ニコンなど)』に設定する
《解説》
絞り優先、早速きました。まず最初は、カメラの上部にあるダイヤルの位置を変更します。
ダイヤルに「A」の文字があれば、基本的にそれが絞り優先モードを意味します。
これにより、オートモードではカメラが自動的に決めていた「レンズの絞り=光を取り込む量の調節」を、わたしたちが自由に決められるようになります。
そして、わざわざ”一眼カメラ”を使う醍醐味のひとつ、「ボケのコントロール」が可能になります!
どんどん進めていきましょう。【設定2】へ続きます。
設定2. 絞り数値「F値」を一番小さな値にする
- シャッターの近くにある電子ダイヤルを回す
- 液晶画面にある数字がそれ以上小さくならないことを確認する
被写体以外の背景などの輪郭がボンヤリする、あの感じです!
英語でも「Bokeh」。日本発の世界共通語♪
《解説》
「絞り優先モードにする」&「F値を一番小さくする」はワンセットです。
ここで皆さんは「いや、さっきからシボリって何?」となっているかもしれませんね。
これをきちんと説明しようとすると、こちらの記事は終わらなくなってしまいます…
おまけコーナー「絞り」の動き
ですが、「百聞は一見にしかず」です。唐突ですが「オールドレンズ」の画像でイメージを掴んでください👀
昔のレンズは、レンズ側にある「絞りリング」を回して、絞り⇔開放を手動で設定していたのです。
登場するレンズは「Super Takumar 55mm f1.8」です!
f1.8が最小F値、55mmは焦点距離ですよ👀
- 「絞り」を絞る=F値を大きくする
レンズに入ってくる光の量が少なくなる
=絞り羽根が絞られる
=ピントが合う範囲が広くなる
=ボケる範囲が小さくなる
↓「絞り羽根」が絞られ、光の通り道が台風の目のようになりました
- 「絞り」を開放する=F値を小さくする
レンズに入ってくる光の量が多くなる
=絞り羽根が開放される
=ピントが合う範囲が狭くなる
=ボケる範囲が大きくなる
↓「絞り羽根」が見えない、完全な開放状態=光がたっぷり取り込まれます
次の作例は、F値の数字を小さく=最大開放にして「ボケ」を強調しています。
まずはF値を最小にしてみて、「ボケ過ぎ…」と感じたら、F値を少しずつ大きくしてみて、好みのボケ具合にしてみましょう。
とにかく「F値が小さいほど、ボケる!」と、まずは覚えておいてください。
F値は重要なので、本ブログの他の記事でも出てきます!
設定3. ホワイトバランスを「太陽光」に設定する
ここからは、その他「おすすめ」の設定となります。
- ①WBボタンを押す
- ②電子ダイヤルを回して「☀」を選択
《解説》
真ん中まで来ました!あと一息です。
「ホワイトバランス」は写真の色味を決める設定です。
こちらも「オート」の設定があり、初期設定はオートになっていると思うので、「太陽光」や「日陰」など、撮影条件に合うよう変更します。
「オート」のままだと、若干「寒色寄りの仕上がり」になりやすいです。
「太陽光」は、文字通り太陽の光が当たっているような暖かみを感じられる色を、自然に再現できる設定です。
しかし、室内で暖色の灯りの場合「赤み」が強く出ますので、「屋内」にセットするなどの工夫をしてみてください。
試しに、他のホワイトバランスを選んで撮影して体感していただくのが一番です。
全ての設定で色が異なって、青みが強くなったり、赤みが強くなったりするのが分かります。
見ている世界とは違う雰囲気が出せるのも、またひとつの魅力ではありますが、まずは!
「自然な感じで撮ること」を意識して、撮影に挑むのがよいと思います。
※機種により電子ダイヤルが本体背面のサブダイヤルになります
設定4. ISO感度を100~200に設定する
- ①ISOボタンを押す
- ②電子ダイヤルで数値が小さくなるように設定
《解説》
ISOは「イソ」またはそのまま「アイエスオー」と読み、「国際標準化機構」の略です。
大きな工場などで「ISO9001」とか「ISO14001」とか、見たことないでしょうか?
カメラのISOも同じで「世界共通ですよ」という意味です。キヤノンのISO100もニコンのISO100も同じということですね。
どういうものかというと、これまたざっくり言うと「光を増幅させるパワー」となるでしょうか。
今回は「100(※機種により200が下限です)」、つまり一番小さな値とした理由は、この設定の想定が「お天気での撮影」なので、十分に太陽の光が降り注いでいる状況=カメラ側で光を足す必要がないからです。
カメラは「光を集めて画像を作る」ため、光が弱くなってくるとシャッターが開く時間が長くなり、手持ちでの撮影が難しくなってきます。
そういうときに、ISOの値を大きくして、暗くてもシャッターが切れる時間を短くするのが一般的です。
ただし、ISO感度はカメラの内部で光を「増幅」するため、自然光だけの場合と比べて、値を大きくするほどに画像が荒くなってしまいます。特に古いデジタル一眼レフカメラでは、ISO:1600あたりで画像がざらついてきます。
どこまで許容できるかは、仕上がった写真で判断するしかありません。
最近の機種では、ISO:51200~それ以上でも、全くノイズを感じられない仕上がりだったりします。
深夜の街中でシャッターを切っても、美しい写真が仕上がるレベル。
数値も昔の機種の30倍以上です!技術の進歩はすごいですね…
設定5. 露出
- ①露出補正「+/-」ボタンを押す
- ②露出レベルが「0」付近になるようにダイヤルで調整する
《解説》
いよいよ最後です。露出を補正することで、簡単に言うと「暗い写真」になるか「明るい写真」になるか、が決まります。
今回の設定で「シャッタースピードの調整」が無いのは、「絞り優先モード」において、設定2~5で決めた値からカメラが自動的に決定するからです。
「ISO」がカメラの「光を増幅するパワー」であるのに対し、「露出補正」は単純に「シャッタースピードの変化」により調節されます。
暗い写真はシャッタースピードを速くして光の取り込む量を抑える、逆に明るい写真はシャッタースピードを遅くして光をたくさん取り込む、ということになります。
理屈はともかく、写真の仕上がりに大きく影響するところですので、「今どんな写真が撮りたいか」を考えて、どちらに振るか決めましょう。
こちらの作例は露出をマイナスに補正し、ひんやりした空気感を強調してみました。
写真の仕上がりを「ちょうどよい明るさ」にしたい場合は、「ど真ん中」で問題ありません。
撮影後、カメラの液晶モニターで確認したときに思っていた雰囲気と違うようでしたら、調節して撮り直してみましょう。
※機種により電子ダイヤルが本体背面のサブダイヤルになります
上記作例は、キヤノンの「EOS 5D 初代」で撮影。古い機種ですが、フルサイズの豊かな表現を体感できます。
まとめ
頭に叩き込んで、いざ撮影へ♪
「絞り優先モード」の説明は以上です!読んでいただき、ありがとうございました。
え?たくさん機能があるのにこれだけで大丈夫?と思われるかもしれませんが、まずはこれだけで全然OKです。オートモードはこれを全部自動でやってくれるので非常に楽ですが、カーナビに頼ると道を覚えられないのと似ていて、オートに頼っているといつまでも各種設定や機能の意味を覚えることができません。
まずはこの「5つの設定」からスタートしましょう!
ここで復習です。
- 「絞り優先モード」でオート頼みの撮影から脱却する
- 「F値」を小さくして光を多く取り込み、ボケを強調する
- 「WB(ホワイトバランス)」を太陽光にして自然な色味にする
- 「ISO感度」を小さくして、自然光の力を最大限に生かす
- 「露出補正」で仕上がり明暗を調節して、撮りたいイメージに近づける
慣れてきたら、「絞り優先モード」はそのままに、「F値」「WB」「ISO感度」の設定をずらしていきます。
- 「F値」を大きくしてボケを減らしていく
- 「WB(ホワイトバランス)」を日陰や屋内にして色の変化を見る
- 「ISO感度」を大きくして暗い場所・時間帯での手ブレを防ぐ
これだけで、本当に劇的に写真が変わります!
そして、この設定こそフィルム一眼レフカメラの時代から脈々と続く、撮影の基本を網羅しているといっても過言ではありません。
この「基礎」があれば、最新のカメラの複雑な設定も素早く理解できるはずです。
オートで撮影するばかり、では進歩しない。
いつもオート、非常にラクですが、実は非常にもったいない使い方です。
こちらの記事にじっくり目を通していただくだけでも「おすすめ設定」をマスターできるはずです。最初は少し大変ですが、1つずつ進めてマスターしてください。
なるほど!努力が大切ってことですねぇ🔥
フルオートモードは、良くも悪くも「ちょうどいい感じ」にカメラが自動で決めてしまうモードです。
“ちょうどいい”とは、できるだけ仕上がりが平凡、あるいは平均的な写真になるよ、という意味になります。
というとメーカーさんに怒られそうですが、露出やシャッタースピードなど「極力失敗がないように」カメラが計算し尽くした結果を写真に反映するわけです。
そうすると、例えば朝焼けや夕焼けの赤い空が撮りたいのに、その「赤み」が補正されて「ただのお昼」のようになってしまったり、陰影を生かした写真を撮りたくてもパカッと明るく補正されて「ただの風景」になってしまったりするのです。
暗い場所や明るすぎる場所、あるいは動体の撮影時などは、全部計算してくれる「オート」はとても重宝します。
でも、撮りたいと感じたそのときの雰囲気がかき消されたりして、狙い通りにいかなくなってしまうこともあるわけです。
撮影状況によって設定を変える必要はありますが、まずは「マイ・セッティング」、自分の得意な設定をひとつずつ身に付けていきましょう。
その基本となるのが「絞り優先モード」というわけです。
マニュアルや撮影テクニック本を読んで、一気にいろんなパターンが目に入ってしまうと、情報量が多すぎて、結局撮影に出かけたときに「今はどう設定するんだっけ…」となってしまいます。
ここに挙げた「5つの設定」を頭に入れてしまえば、設定の基礎の基礎、いわゆる土台が築けるように構成してみました。それは、思い通りの写真が撮れるようになるための第一歩。お手元にカメラとレンズがあれば、こちらの記事を読みながら設定して、頭に叩き込んでしまいましょう。
補足.オートが良い場合も、あります!
とはいえ、今回の設定がいつでも万能、というわけではありません。
え❓前章の力説は何だったんだ💦
状況により、頼れるものには頼りましょう😅
以下のような場合は、「オート」で撮影したほうが確実です。
- 運動会で走り回る子どもを撮影する
- 誕生会でローソクを吹き消す場面を撮影する
撮影対象が動くものであったり、撮影場所が極端に暗かったりすると、絞り優先モードでは手ブレ・ピンぼけ写真を量産してしまいます。
せっかく記念となる写真がピンボケだらけになるのは悲しいですよね…
完全にマスターしているなら挑戦もアリですが、慌てて「ISO感度を大きくして…F値は小さくしなきゃ…あ!露出が暗いままだった」といった状況に陥って、シャッターチャンスを逃してしまったら、元も子もありません。場面に応じてオートモードに戻して、カメラにお任せしましょう。
ということで、撮影シーンごとに最適な設定がありますので、順番にひとつずつ覚えてマスターしましょう👍
今からカメラを購入される方は、ぜひこちらの記事もご参照ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。