「85mm単焦点レンズ」、皆さんはお持ちでしょうか?
「使いにくい」という声も聞こえてくるこのレンズですが、実際に撮影すると…凄く良いです!
とにかく美しいボケ味が魅力です。
85mm単焦点レンズは、多くのプロカメラマン・写真愛好家から絶大な支持を受けており、ハッとする作例の「使用したレンズ」を確認すると、”85mm”ということもよくあります。写真を趣味として続けていると、どこかで必ず欲しくなる憧れのレンズでもあります。
私もボケの美しさに惹かれて、長年欲しいと思い続けておりました。が…
とにかく高いんです❗気軽に買えません…💧
…なんとも下世話な理由…😿
「85mm レンズ」といったキーワードでショッピング検索すると、ほとんどが10万円以上。趣味でちょっと撮りたいな、という気軽な気持ちで買うには躊躇する価格帯です。中古市場でも10万円近辺のものが多く、なかなか強気のお値段で並んでおります。
ということで私、探しに探しました。「お金を掛けずにデジタル一眼カメラを楽しむ」、このブログのテーマに合わせて「とにかく安い85mmレンズ」を。
結果、何とか「3本」入手することができましたので、記事の後半で紹介してまいります。
当然、最高級・最高峰のレンズとはいきませんが、安くても古くても「85mmは85mm」です(笑)。少しでもその魅力に迫っていく所存ですので、最後までお付き合いいただければと思います。
なお、本記事の作例は「ボケ」を強調したものがメインで、非常に傾向が偏っておりますのでご了承ください…
魅惑の85mm単焦点レンズ
結論から言えば、「85mm単焦点レンズ」はその特性を理解し、きちんと活用すれば、この焦点距離ならではの「とても美しい写真」を撮影することができる、魅力いっぱいのレンズです。
…と威張って言えるほど、私はまだまだ使いこなせているわけではありませんので、しっかりした作例を確認されたい場合は、プロのフォトグラファーさんや、メーカー公式サイトの作例を検索することをおすすめします。
こちらは単なる紹介記事というより、85mm単焦点レンズの中でもお手頃価格で入手しやすいレンズを紹介しておりますので、私と同じく(?)、低予算で手に入れたいとお考えの方にはお役に立てるかもしれません。
使いにくいと感じる理由。
馴染みのない「中望遠」
まずはネガティブなお話、「使いにくい」と言われる理由からです。85mmレンズは、その魅力とは裏腹に「使いにくい」と感じさせる局面があるようですが、使用歴の浅い私にはとてもよく分かります。
焦点域としては「中望遠」にあたる、このレンズ。画角が標準域でも望遠域でもない、その中間(?)ということで、誤解を恐れずに言ってしまうと、慣れない人にとっては何とも「中途半端」なのです。
イメージセンサーのせい?
一般的に「85mmレンズが良い」という場合、カメラ本体は「フルサイズ機」を使用していることが大前提です。
単焦点レンズに興味を持ったとき、真っ先に「まずは50mmレンズ」という方が多いと思います。50mmレンズは標準的なキットレンズとしても採用されやすいため、(中古)市場にも多く出回っています。そういう状況も手伝って、85mmは極端な言い方をすると「ビギナーにはマイナー」と言えるのかもしれません。
イメージセンサーの論争には意味がない、などの意見も見られますが、個人的には「イメージセンサーの違いによる画角」は絶対に理解していただきたいところです。
ダブルズームキットだけで大丈夫!満足してます!という場合は知らなくてもよいかもしれませんが、レンズの魅力を本当の意味で知るためには、ぜひ「フルサイズ換算」を知ってください。
そもそも「単焦点」であること
スマホやデジカメのような、ちょうどよい広角から望遠までのズームに慣れていると、微妙な望遠域で固定されている単焦点レンズは、不自由に感じますよね。
特に、狭い場所で近くの被写体を撮影するときや、景色などの広い範囲を写真に収めたい場合には、使いにくさを感じるはずです。
何も考えずに風景を撮ると、こんな感じに…
これ一本で旅行にいくと、ストレスになりそう💦
まぁそんなときは…スマホがあれば大丈夫ですよ(笑)
85mm単焦点レンズが評価される理由。
ではなぜ、高い評価を受け続け、各メーカーこぞって力を入れているのでしょうか。ここからはポジティブなお話になります。
まず、85mm単焦点レンズは「ポートレート撮影」に最適、という点が挙げられます。
被写体を自然に強調し、背景を美しくボケさせることができます。
「素敵なプロフィール写真」を見たことがあると思います。背景がボケて人物がくっきり浮かび上がるような写真は85mmが多いように思います。
プロのカメラマンが、モデルさんを写真集や旅雑誌などで撮影するためには欠かせないレンズというわけですね。
「使いにくさ」を克服したら、他のレンズでは得られない独特の美しさ・表現力に満足していけるはずです。
こちらはニコンの公式サイト、「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」の紹介ページです。
まさに最新のレンズ。作例も美しいポートレート写真が満載です!しかし…このレンズは30万円オーバー。
ほかの焦点距離ではダメなのですか?
さて、85mmにこだわらなくても、50mmの単焦点レンズでも良さそうなものですが…何が違うのでしょうか?
よく言われるのは、85mmという焦点距離は「人間が何かを見つめたときの視野角に非常に近い」ということ。これにより、被写体を違和感なく際立たせることができるようです。また、85mmは基本的に明るいレンズの仕様(後述)となっているため、背景の程よいボケ具合が、被写体との間に適度な距離感を作り出し、立体感を生み出します。
こういった距離感の心地よさ、秀逸な仕上がりなどが相まって、このレンズの価値を不変のものとしているのでしょう。
美しいボケ効果
85mm単焦点レンズは、最大絞り開放値(F値)が大きい(数値は小さい)ものが多いです。そのため、被写界深度が浅い=柔らかなボケを生み出すことが可能です。F値の数値が小さい=しっかり開放するレンズは「明るいレンズ」と呼ばれ、プロの写真家は必ず持っているし、メインで使っている方も多いはずです。
主なメリットは、以下の通りです。
- 背景が美しくボケる
- 被写体が際立つ
- 写真に深みが出る
- 芸術性が増す
最後に挙げた芸術性、これが一番の特徴であり、魅力だと思います。
ボケをしっかり出したいときは
ボケを最大限にするためには、撮影モードを「オート」ではなく「絞り優先モード」にしましょう。そうするとF値を手動で設定できるようになるので、一番小さな数値に設定します。
レンズに「1:1.8」という表示があれば、カメラ側も「F1.8」にすることで、レンズの絞り羽根が最大に開き(開放)、よりボケる仕組みになっております。
ボケ過ぎだ…と感じたら、F値の数値をすこしずつ上げてみてください。徐々にピントの合う範囲が広がっていきます。
絞り優先については、別の記事で詳しく書いておりますので、ぜひご一読ください。
実際に3本入手して撮ってみた。
ではいよいよここから、私が入手しました「85mm単焦点レンズ✕3本」を、それぞれで撮影した作例を交えて紹介してまいります。
えっメーカー公式サイトの作例を見せた後に!?
しかも一本は変わり種です😅
[ニコン] Ai AF NIKKOR 85mm F1.8S
まずはニコンの85mm単焦点レンズ、「Ai AF NIKKOR 85mm F1.8S」です。
私の知る限り(ネットで検索した限り)では、オートフォーカス系の85mmで最安値圏にあるレンズです。
ご認識いただいたかもしれませんが、こちらのレンズはかなり古いものですので「中古」で探していただくことになります。
そしてこのレンズ、ニコンの旧製品一覧にも存在しない、若干謎めいた位置にいるレンズです。
では、作例をご覧いただきましょう!
ボケの表現を体感する。
こちらの作例は・・・ボケ過ぎの例です(笑)。ネコの耳先~頭頂部以外はとろけるようにボケていますね。
決して水の中を泳いでるわけではなく、絨毯の上に座っているだけです。
動物を撮るのにここまでボケが効いていると不自然かもしれませんが、標準のレンズでは味わえないボケ具合が伝わる作例かと思います。
自然な透明感
次は植物の写真です。被写体となる葉っぱの特徴を自然に捉えているように感じないでしょうか。鮮やかな緑色・葉っぱの微細なディテールが引き立ち、写真が生き生きしているように思います。
このレンズが85mmの中でも安価な理由として、「85mmレンズの中ではF値が少し高め」という点が挙げられます。「F1.8」という値は、「量産型の明るい単焦点レンズ」の基準なのでしょうか。
キヤノンの有名な撒き餌レンズ、「EF50mm f/1.8」シリーズがかつては代表格でした。
私もこの王道を突き進んでおります💧
さらにさかのぼって、オールドレンズ「TAKUMAR 55mm f/1.8」も、当時のフィルムカメラのキットレンズです。
85mmレンズでは「F1.4」「F1.2」あたりが主流ですが、かなり高額です。
私もF値が低めのレンズを探していましたが、この「F1.8」レンズが相場より低く”出品”されているのを目撃し、無事購入することができたというわけです。
持ち出したその日から、十分に満足できる写真が撮れたことをよく覚えています。
ポートレートの適性
ポートレート写真においては、被写体との距離感や背景の美しさを引き立てることができるため、ポートレート撮影をメインとしているプロの写真家たちにも愛用されています。
とはいえ、今回紹介しているこの古いNikkorレンズを、現役・メインで使用しているプロの方はいらっしゃらないとは思いますが。
背景が緑だと、人物が引き立ちますね。上の写真は緑の草原ではなくて、雑草です(笑)。ボケのありがたいところは、そのものの正体がわかりづらくなること。
色味さえごちゃごちゃしていなければ、どんな場所でも「絵になる」という点です。
こちらの作例もボケてはいますが、林の中にいるということは分かりますね。手前の木の幹の力強い感じがよく表現されていると思います。
いかがでしたでしょうか。
とりあえず撮ってみたい、というレベルであれば期待に応えてくれる実力は十分にあります。
古くても85mm。オワコンなんかではありません。標準ズームの次に入手するのも一考です。
今回使用したカメラはニコン・D700です。ほかの記事で紹介しておりますので、ご一読いただければと思います。
[ミノルタ] Ai AF 85mm F1.4G
続いてのレンズは、今をトキめ…かないミノルタ製です!現代でこそマイナーですが、ミノルタ全盛期を支えた銘玉なのです。かなりハイレベルな描写力で、凡人の私ではまだまだ実力を発揮させることができておりません…
最初のニコンのレンズはF1.8でしたが、こちらはF1.4。さらに一段明るいタイプですね。
このクラスだと、キヤノンやニコンなどの一般的な価格相場は10万円前後からスタートする感じなのですが、今回のミノルタ製は3万円前後で「ほんの少しカビあり」の品を入手できました。キヤノンやニコンはもちろん、シグマ製なども軒並み高額。中古でも強気の価格帯となっております。
中国製など、割安となっているレンズもありますが、「マニュアルフォーカス」が主流なので、注意が必要です。オートフォーカスが無くてもよい、という場合は候補となりそうですね。
こちらのレンズは「ミノルタ製」ということで、マウントは「Aマウント」です。
聞き慣れないかもしれませんが、Aマウントはミノルタがカメラ事業から撤退後、ソニーが引き継いでいます。が、デジタル一眼レフの規格ですので、ほぼ遺産状態となっております。なぜなら、ソニーがミラーレスに舵を切ったとき、マウントも「Eマウント」という、規格が全く異なるものになったため。Aマウントの新製品は望めない状況となりました。
「えっミノルタのレンズってソニーのデジタル一眼レフで使えるの?」と思ったあなた、ちょっと前の私と同じです(笑)。
こちらの記事で、Aマウントについてあれこれ書いておりますので、参考にしていただければと思います。。
そういった背景から、かなり需要が限定的となっており、中古相場も全体的に低めで、良品でも運が良ければ格安で入手可能です。
まさにその「格安」で手に入れたレンズの実力はいかがでしょうか。
やはり際立つ被写体
何気ない植木と白い柵なのですが、葉っぱの輪郭と奥に向かうにつれてボケていく柵がよい雰囲気です。
多少暗い場所でも大丈夫
85mm単焦点レンズは大口径であり、明るさの乏しい環境でも優れた性能を発揮します。夕暮れや、暗めの屋内などで、シャッターが「カッ…シャン」とゆっくりになってブレブレ写真が撮れてしまった…という経験をされた方もいらっしゃるはず。そんな条件下でも、「F1.4」が効力を発揮。かなり安心して写真を撮影することができます。
こちらは障子。障子紙の向こうから静かな光が、紅葉の葉っぱのかたちをした紙(本物じゃないですよね…?)を優しく浮かび上がらせています。
欄間の写真。鳳凰でしょうか。被写体の芸術性が高いと、撮るほうもなぜか緊張します…!
作例があまりにも偏ってますので、いずれ本レンズの専用ページを設けたいと思います。
とても優れたレンズですが、まだ今の私の力量では性能を発揮しきれておりません。
ミノルタはカメラ・レンズ業界から撤退してしまいましたが、今も続けていたらキヤノン・ニコンと並ぶ「三大メーカー」として君臨していたはずです。とても残念ですね。
作例について「どこかの古民家?実家?」と思われたかもしれませんので、ご紹介します。
今回の”ロケ地”は、名古屋市にある「旧豊田佐助邸」でした。
柔らかいボケ感が、日本の旧家屋に馴染むと感じるのは、私だけではないはずです。
カメラ本体「SONY α900」の記事はこちら↓です。ぜひ、ご参照ください。
【番外編】Kenko SOFT 85mm f/2.5
最後、3本目のレンズは「Kenko SOFT 85mm f/2.5」です。
番外編とした理由は、開放「F2.5」でソフトフォーカス固定となるタイプだから、です。
85mm欲しい、けど高いなぁ…と躊躇していたときに、中古相場で1万円を切る、こちらのレンズに目が留まりました。しかし、85mmで1万円を切る!ほかの85mmレンズではなかなかないことなので、(ソフトフォーカスと理解しつつ)迷いなく購入しました(笑)。
決してピンボケではありません
それにしても、本当にソフトに仕上がります。なので、非常に用途が限定的になるというか、いつでもどこでも使えるレンズ、とは言えません。ただし、面白い仕上がりになるので、この価格帯なら全然アリだと思います。
作例は基本的に最大開放です。絞るとクッキリしてくるのですが、それではあんまりこのレンズを使う意味がなくなる気がして、持ち出したときはやはり「F2.5」で撮ることが多くなります。
被写体は何がふさわしいのか
まずは、ソフトフォーカスが似合いそうな桜です。
夢の中にでもいるような雰囲気ですよね。
下手すると「ピントが合っていない」と思われてしまいそうです。
ポートレートはいかがでしょうか。割り切って撮影するぶんには、幻想的な雰囲気が出てよいかもしれませんが、積極的に人物撮影で使用する、ということはないでしょうね。
はい、こちらは名古屋城です。この仕上がりは結構好きですね。「HDR」のような雰囲気にもなっています。もう少し違う建物も撮ってみたい、と思わせる写真となりました。
こちらは…植木か雑草か忘れましたが、葉っぱが発光しているようですね。
ピントが合っているところが光っていると、そのものが光を放っているようで、美しいです。
マイナーではありますが、面白いレンズのひとつであることが伝わったら嬉しく思います。
そもそもソフトフォーカスとは?
ちなみに、Wikipediaによると「軟焦点レンズ」とのこと。日本語にしても「軟らかい」になるのですね。
写真に詳しい方々から「そんなことも知らないの?」って怒られてしまいそうです。
「球面収差」という、レンズの特性をあえて残しているそうです。文系の自分には光学的な説明を難解に感じてしまいますが、要は「通常のレンズが、光を焦点にピッタリ合わせているのを、あえてバラしている」ということなのですね。詳しくはこちらもWikipediaを参照願います。
まとめ
今回の記事では、85mm単焦点レンズの魅力について、お伝えしてまいりました。
ポートレート写真撮影における最適な選択肢と言えますが、その自然な描写力と美しいボケを生かせるのであれば、実は風景でも、どんなシチュエーションでも期待に応えてくれるはずです。他のレンズでは得られない魅力を、あなたも一度、体験してみてはいかがでしょうか。
85mm単焦点レンズは、その美しい描写力、ボケの魅力、透明感など、それらの圧倒的な仕上がりにより、写真愛好者やプロのフォトグラファーたちに絶大な支持を得ています。あらゆるシーンでその優れたパフォーマンスを発揮し、写真表現の可能性を広げてくれます。最初から良く撮れるため、「上手くなった?」みたいな錯覚も感じるほどです。究極の写真体験というと大げさかもしれませんが、ぜひ85mm単焦点レンズを手に入れて、新たな写真の旅に出かけてみてください。
使いにくさを感じるかもしれませんが、その特性を理解し、適切に活用すれば、他のレンズでは得られない美しい写真を撮影することが可能です。使いにくさを克服するころには、被写体の存在感を引き立てる美しい仕上がりに病みつきになっているかもしれません。
以上、85mm単焦点レンズの魅力について、私なりにお伝えしたつもりです。この記事が、あなたの写真撮影の参考になれば、こんなに嬉しいことはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。