皆さんは写真を撮るとき、撮影する場所を決めることに悩んでませんか?
- いい写真を撮るには、いい場所に行かないといけない…
- 綺麗な被写体がないから、いい写真を撮るのは諦めている…
そんなふうに思っている方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
結論は
「すべての場所が撮影スポットである」
ということです。
人気写真家さんたちの写真集は、絶景ポイントや映えスポットが舞台とは限りません。
今まさに、あなたが居るその場所が、芸術作品になるかもしれません。
そう思うだけで、カメラを構えてみたくなりませんか?
唐突にネコの写真を出してきて、失礼いたしました。肖像画っぽくないですかね(笑)。
微妙にカメラ目線じゃない…何見てたのかな💦
いつも「いい場所」に行く必要はない
どうしても「いい写真=いい場所で」というイメージがありますよね。
自然豊かな山奥、美しい海岸、田園風景…
観光名所、映えスポット、有名建造物…
しかし、恐らく皆様もそんなに頻繁に「撮影スポット」に行けるわけではないはずです。
- 平日は朝から晩まで仕事なので、まず無理
- 週末は家族サービス、友達との交流もあるし、時間が取れない
- 観光地に行っても家族サービスがメインで、じっくり撮影するのは厳しい
そんな感じで、美しい風景を探してカメラを構えて撮るなど、なかなかできないものです。
なので、場所を選ばず、いつでもどこでも撮ることがおすすめなのです。
本当に、自宅近辺からご近所、ちょっとした公園、お店など。
それでは素晴らしい写真を撮れないではないか、と思うかもしれません。
が、そんなことは全然ありません。
素晴らしい写真集は「いい風景」ばかりではない
Google検索でも図書館でも本屋さんでもよいので、著名な写真家さんの写真集に掲載されている作品を見てください。
決して、一般的に「素晴らしい景色」とされる富士山であったり、「SNS映え」する鎌倉の江ノ電だったりするわけではないことが分かるはずです。
街をブラブラして傑作を撮る!
プロの写真家たちは、まさに「街ブラ(失礼…)」しながらシャッターを切って、芸術的な作品に仕上げているのです。
もちろん、散歩してたら撮れちゃった、という簡単な話ではありませんが。
歩きながら、その街から何かを感じ取り、写真に落としていくのです。
そして、その写真を丁寧につなぎ合わせていくことで、ひとつの写真集として完成させています。
でも、本当に「特別な街」というわけではありません。
北海道とか沖縄とか、絶景や観光地に行っているわけでもないのです。
どういう視点で、どういう気持ちで撮影しているのか、また写真集を見るときに何を感じるか…
実際に写真集を手に取って、いろいろ考えながら鑑賞してみてください。
明快な説明はできないし、解釈も人それぞれ。作者もいちいち「この写真の意味はですねぇ…」などと解説しているわけでもなく、受け止め方は見る人に委ねている、ということも多いです。
家の中で傑作を撮る!
必ずしも、外に出る必要はありません。自宅を舞台にカメラを構えてみましょう。
家の中であれば、凄い写真を撮るぞ🔥とか、一瞬を逃さないぞ👀などと躍起になる必要もないですよね。
いつも見ている家具とか家族とかペットとか、脱力しながらレンズを向ければ、幸せな瞬間を切り取ることができるかもしれません。
もしかしたら、少し視点を変えてシャッターを切れば、意外性のある写真が撮れるかもしれないのです。
なので、いつも一台はカメラを手元に置いておくのもいいでしょう。
「あ、今の瞬間撮りたかったな」と思って後悔するくらいなら、コンパクトデジカメでもスマホでもよいので、サッと撮る習慣を身につけてしまいましょう!
何気ない日常を芸術にした4つの作品
ということで、ここからは個人的に印象に残っている写真集4点を挙げさせていただきます。
この中から選択していただかなくてもよいので、気になった、あるいは既に気になっている写真集を一冊手に入れてみませんか?
ときどきページをめくっては、何が魅力なのか?何を伝えたいのか?写真をじっくり鑑賞して答えを探すのも楽しいものです。
佐内正史「生きている」
まず、佐内正史氏の作品、「生きている」です。
今も人気の写真家さんですが、この作品が佐内氏の出世作と言えるでしょう。
街の風景を的確に切り取る
本当に、ご自身がお住まいの町を切り取った写真を、絶妙なバランスで並べています。
普通の駐車場、民家、原チャリ、電柱などの人工物。
その中に空、海、鳥などの自然物。
一見、統一されていない写真群が、見終わったときにひとつの塊となっていくような世界観。
その解釈は作者の意図を外しているかもしれませんが、選び抜かれた作品たちには必ず意味があるのです。
もしかしたら、あなたの町も外に出た瞬間から作品になるかもしれない。
「そのへん」を撮影することに抵抗がなくなるかもしれない。
そんな気持ちになれる作品だと思っています。
もちろん、真似できるものではないし、気軽にするものでもないですが…
試しにカメラを持って散歩してみませんか?
自分なりの解釈で、自分の町を撮ってみましょう!
中平卓馬「Documentary」
引き続き、街の風景を大胆に切り取った作品「Documentary」を紹介します。
街の被写体を直球で切り取る
中平卓馬氏は、既に他界されていますが、波乱万丈の人生を送った人です。
既に写真家として活躍していた若かりし頃、パーティーのさなかに倒れてしまい、命こそ取り留めたものの、ほぼ全ての記憶を失うという、壮絶な経験をしているのです。
次々と画期的な作品を発表し、写真とは何か?を追求している中での出来事でした。
こちらの作品「Documentary」は晩年に発表されたものですが、若いころの記憶が戻らない中、写真家としての活動を続けることで、「写真とは何か?」を新たな視点で探求し続けたという、稀有な生涯を送った人でした。
この本の帯に、かつて共に活動した写真家・森山大道氏が
と表現しています。
それほど、彼の写真が放つインパクトは強烈です。
普通なら被写体としては候補にも挙がらないような、呑み屋の看板やタヌキの置物、ベンチで寝る中年男性、しゃがむ農家の女性など…
かなり被写体に寄った作品が大半を占めています。
それがなんだと言われると、本当に解釈が難しいですが、壮絶な人生経験から生み出される、類稀な視点を持つ中平氏の作品に触れてみてほしいです。
作品は全て「100mmのレンズを使用して縦位置で撮影」されているのも非常に特徴的です。
安村崇 「日常らしさ」
今度はインドアの作品、安村崇氏の「日常らしさ」を紹介します。
家の中を無機質に切り取る
こちらは、もはや外にすら出ていない写真集です。
コロナ禍では、まさかの「外出ができない」という前代未聞の状況に見舞われ、撮影に出かけることもままならない日々が続きました。
でも、外に出なくても家の中だって、素晴らしい撮影対象になるのです。
ただし!こちらの作品は、ただただ家の中を撮っただけ、というわけではないので、あしからず。
普通のテーブルフォトではありません。
恐らく全て自宅の部屋を舞台としているのですが、そこに淡々と配置された被写体の放つ不気味で不思議な静けさは無機質であり、もはや異次元の空間に思えるほどです。
こういう視点と感覚と閃きを持っていたいなぁと感じる作品です。
あなたの部屋も、不思議な写真になるような場所は見つかりそうですか?
ただの「お部屋写真」ではない、少しザワつくような写真を撮ってみたい場合、切り取り方を工夫してみると面白い写真が撮れたりします。
家具の角とか、扉の一部など。
安村氏の作品をまねて、生活感の無い雰囲気=無機質な空間を作り、食材や果物=有機質を無造作に置いてみると、ちょっとした作品っぽくなったりするかもしれません。
荒木経惟「道」
最後は、2024年に惜しくもこの世を去った、知る人ぞ知るアラーキーこと荒木経惟氏の「道」という作品です。
家の外の風景を撮る!
こちらの作品もまた外出しないパターンですが、家から見える風景、しかも一つの方角だけをほとんど同じ角度で、季節・時間帯・天候など、条件を変えながら撮り続けるという、ありそうでなかった作品です。
つまりは、家からの風景を「定点観測」し続けたものを、写真集として発行したわけですが、世界のアラーキーだからこそできることかもしれません。
でも、様々ある撮影方法のひとつなので、あなたのおうちの庭そのもの、ベランダから見える近景・遠景を今一度見直してみてください。
もしかしたら、新しい発見があるかもしれません。
ちなみに、アラーキーといえば人物、とりわけ女性をモデルとする、ときには過激ともとれる写真集がクローズアップされがちですが、幅広いテーマで作品を発表しています。
著書も多数発表されていて、どれも興味深い内容となっております。
写真を撮る視点はとても勉強になりますので、一冊でも読まれることをおすすめします。
まとめ
ひとまず、4つの作品を紹介させていただきましたが、共通して「身の回り」に目を向けているのがお分かりいただけるかと思います。
結局は、撮影の対象を「素敵な風景」とか「決定的な瞬間」など、特別なモノに固定してしまわないことが大切なのです。
私たちの身の回りは、見慣れ過ぎてしまってなんでもないようなモノや風景などに囲まれています。しかし、ひとたびカメラを向ければ、また違った感覚で捉えることができ、新しい発見があるのではないでしょうか。
【撮る=切り取る】
ハッ!!と何かを感じたら、スッとシャッターを切ってみてください。
ハッ!!とした理由が何だったのか、気づきにつながるかもしれません。
それを繰り返すことにより、そして自分が何を撮りたいか?が見えてくるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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