ご訪問ありがとうございます。
主に「古いカメラとオールドレンズ」を組み合わせて楽しむブログ「じぶんカメラ」です。
今回は結果的に「禁断の組み合わせ」となったので報告いたします。
キヤノンのデジタル一眼レフ・フルサイズの名機「EOS 5D(初代)」に、半世紀以上前の銘玉「Canon FL 50mm F1.4」を装着するという試みです。
「同じキヤノンなんだから、普通につくでしょ?」
「マウントアダプターを使えば簡単じゃないの?」
そう思った方。実はこの組み合わせ、オールドレンズ沼の入り口にある「もっとも高い壁」の一つなんです。
結論、「デジタル一眼レフとオールドレンズは、マウントアダプターの性能に左右される」のです。
今回の組み合わせでは、「ソフトフォーカスのような仕上がり」となりました。
言ってしまえば単なる「補正レンズの欠点」ですが、あえてドーピングアイテムとして撮影に挑んだ結果、現代の高性能レンズでは絶対に撮れない「奇跡の写真」が撮れたので、その経緯と作例をじっくり紹介させていただきます。
高精細・高画質求められる方にはあり得ない写真ですが、「不自由と不完全を愛する」という当ブログのモットー全開でお送りします(笑)。
※解説を飛ばして作例をご覧になりたい方はこちらをクリック!
そもそも「Canon FL 50mm F1.4」とは?
本題に入る前に、今回の主役であるレンズについて少し触れておきましょう。
Canon FL 50mm F1.4。手元にあるのは”I型”です。※II型まで生産

1960年代、キヤノンが一眼レフ市場で戦っていた時代の標準レンズです。
FLとは「FLマウント」を意味し、フィルム時代にメジャーだった「FD」の一世代前のマウントにあたります。
フリマアプリやハードオフ、中古カメラ店で探してみると、FDレンズはそこそこの値段がついていますが、このFLレンズはしばしば「ジャンク」として格安で手に入れることができます。
私が手に入れたのはフリマアプリで、フィルム一眼レフカメラ「CANON PELLIX QL」とセットで約2000円でした。
なぜこんなに安いのか?
理由は明白で、「現代のデジタルカメラで使いにくいから」です。
他にはFLマウントがマイナーで、形状が独特である点など、初心者が手を出しにくい要素が揃っています。
しかし!その造りは本物です。
ずっしりと重い金属の鏡筒。ヌメッとしたピントリングの感触。シルバーの絞りリングの存在感。
「モノとしての良さ」は、プラスチック主体・デジタル制御の現代レンズとは比べ物になりません。このレンズを愛用のEOS 5D 初代で使いたい。そう思ったのが始まりでした。
オールドレンズ初心者を絶望させる「フランジバックの壁」
ここで少し、技術的な話をさせてください。
なぜ、同じキヤノンのカメラ(EOS)に、キヤノンのレンズ(FL)が合わないのでしょうか。
それは「フランジバック(マウント面からセンサーまでの距離)」の違いにあります。
- EOS(EFマウント): 44.0mm
- FL/FDマウント: 42.0mm
お気づきでしょうか。
昔のFLレンズのほうが、2mm短いのです。
レンズというものは、決められた距離で光を結ぶように設計されています。EOSボディにFLレンズを付けようとすると、アダプターの厚みの分だけレンズが前にせり出してしまい、どうやっても「近視」のような状態になってしまいます。そして、無限遠(遠くのピント)が出なくなるのです。
これを解決するには、以下の2つの方法しかありません。
- マウント改造: 不可逆な改造。(ほぼ不可能)
- 補正レンズ入りアダプターの装着: レンズを1つ足して(無理やり)焦点距離を伸ばす
当然ですが、後者の「補正レンズ入りアダプター」を選ぶことになります。
準備したのは純正ではなく、フリマアプリなどで中古で数千円で売られている、サードパーティ製のアダプターです。

しかし、古くからのカメラファンは口を揃えてこう言います。
「補正レンズ入りはやめておけ。画質が別物になる」と。
なぜなら、レンズ本体以外に「別の会社が作ったレンズが一枚加わる」から。
その時点で「FL 50mm F1.4」を純粋に評価することはできなくなるわけなので、当然ですよね。
このように、カメラとレンズの間にセットします。

これで、キヤノンのEFマウントのカメラでFLマウントのレンズが使えるようになります。

作例:画質は劣化したが…幻想の世界
ここから「画質が(悪い意味で)別物になる」と言われるアダプターを使い、あえて絞り開放(F1.4)で撮影した写真をご覧ください。

いかがでしょうか。
これを「失敗写真」と見るか、「おもしろい作品」と見るか。
結果としては、レンズの正常な写りではないので「失敗」「NG」です。
しかし私は、ファインダーを覗いた瞬間に「いいね!」と思いました(笑)。
ピントの芯はどこにあるのか分からないほど柔らかく、全体が光のベールに包まれています。
特にご注目いただきたいのが、上部の赤い飾りの部分。
赤色がじわーっと滲み出し、まるで発光しているかのようなハロ(光の滲み)が出ています。

風景を写せば、背景の家や山の輪郭は太い半透明の線が引かれているようです。もちろん、この日は霧がかかっていたわけではありません。

現代のレンズ評価基準である「MTF曲線」や「解像度」で言えば、間違いなく0点でしょう。

しかし、写真としての「雰囲気」や「情緒」で言えば、Photoshopでどう加工しても作れない世界観です。

まるで、昔の映画や回想シーンのような、夢の中の景色を見ているようではありませんか?
ご覧のとおり、撮影地がレトロなのも理由のひとつかもしれませんね(笑)。
ひな人形も、幻想の中にいるようです。

ひな人形のなかに、あのフィギュアたちも。

撮影地について
三重県いなべ市の「阿下喜」という町で撮影してきました。
毎年、「あげきのおひなさん」というイベントがあるので、ぜひ足を運んでみてください。
※作例は2025年のものです
なぜ、こんな「魔法のソフトフォーカス」になるのか?
この強烈なソフト効果の正体。
それは、悲しいかな「補正レンズの性能限界」によるものです。
安価なマウントアダプターに入っている補正レンズは、あくまで「ピントを合わせるため」の簡易的なものです。
絞り開放値が暗いレンズであれば、特に気になるようなことはありません。実際、これまで気になったことはなかったです。
FL 50mm F1.4のような明るい大口径レンズを開放で使うと、大量の光がレンズに入ってきます。その光を、小さな補正レンズが無理やり屈折させる際に、「球面収差」というものが盛大に発生します。
球面収差とは、光が一点に集まらず、ズレて重なってしまう現象です。
通常、これは「画質劣化」「甘い描写」として忌み嫌われます。
しかし、今回は撮影地の雰囲気も手伝ってプラスに働きました。
- 意図しない滲み ⇒ 幻想的なグロー効果
- 甘いピント ⇒ ノスタルジックな空気感
まさに、「欠点が魅力に変わった瞬間」です。
これを計算して撮れるなら、わざわざ「ソフトフィルター」や、「ソフトフォーカスレンズ」を買う必要はありません。偶然の産物ですが、今回は「ジャンクレンズと(低品質な)マウントアダプター」の組み合わせで、この表現を手に入れることができたのです。
「EOS 5D 初代」だからこの味が出たのか?
さらに付け加えるなら、カメラボディが「EOS 5D(初代)」であったことも、要因のひとつだと思います。
もしこれが、高画素な最新ミラーレス機(R5など)だったらどうでしょうか。
4500万画素の解像力で、この「ボケボケの収差」を克明に描写してしまうと、単なる「汚い、解像していない写真」に見えてしまったかもしれません(単なる憶測です💦)。
EOS 5D 初代の、約1280万画素という「適度な緩さ」。
そして、今でも名機と語り継がれる「フィルムに近い画作り」。
この2つが、オールドレンズの緩い描写と混ざり合い、デジタルを感じさせない「絵画的な一枚」を生み出したのだと推察しております。
撮影の現場は、ちょっと面倒です
良いことばかり書いてきましたが、実際にこの組み合わせで撮るのは骨が折れます。
まず、仕上がりが予測不可能。
背面の液晶画面は小さいため、きちんと写ったのか、ソフトフォーカス感が出たのか拡大表示しないと分かりづらいのです。ピントも、最近のカメラのような「ピーキング(ピントが合った位置を着色して示す)機能」もEOS 5D 初代にはないので、実はピンボケでしたという写真が何枚かありました。
私は今回、「だいたいこの辺だろう」という勘で撮り、背面液晶で拡大して確認する、という泥臭いスタイルで撮影しました。
また、逆光には弱いです。

補正レンズが増えている分、乱反射が起きやすく、角度によっては画面全体が真っ白になります(フレア)。
それもまた「味」ですが、コントロールするのは一苦労です。

【補足】本来の描写を楽しみたいなら「ミラーレス」が正解
ここまで「補正レンズの滲みは最高だ!」と熱弁してきましたが、最後に冷静なアドバイスを。
FL 50mm F1.4の『本来の写り』を楽しみたい・滲んでいない写真も撮りたい
という場合は、ソニーのα7シリーズなど「ミラーレス一眼カメラ」を使えばOKです。
ミラーレス機であれば、カメラ内部にミラーが無い=フランジバックが極端に短いため、補正レンズ無しの「筒だけのアダプター」を使えるので、レンズの性能を100%引き出した写真が撮れます。
私がミラーレス機を使う場合のメリットのひとつは
「明るいオールドレンズを補正レンズ付アダプター無しで撮れること」
です。
- デジタル一眼レフ + 補正レンズ: ソフトな描写など変化球を覚悟して撮影
- ミラーレス + ガラスなし: レンズ本来の性能で撮影
このように使い分けるのが、賢い?オールドレンズ・ライフと言えるでしょう。
まとめ:ジャンクレンズは「偶然」を楽しむもの
今回の撮影で改めて感じたのは、「やってみないと分からない」という面白さです。
セオリー通りなら「画質が悪くなるから避けるべき組み合わせ」でした。
しかし、実際に試してみることで、「魔法のような効果」に変身することができました。
2000円台のレンズと、数千円のアダプター。
合計しても飲み会1回分以下の出費で、こんなにも豊かな写真体験ができる。
これだから、(ジャンクな)オールドレンズ集めをやめられないのです。
みなさんの家の防湿庫にも、マウントが合わずに眠っているレンズはありませんか?
押し入れに、お父さんが使っていたフィルムカメラとレンズが転がっているかもしれません。
もしかしたらそのレンズ、アダプター1つで「化ける」かもしれませんよ。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

