「ミラーレスカメラがつまらない」と感じる本当の理由。車や音楽の歴史から紐解く、写真の熱狂を取り戻す方法

boring mirrorless camera

高性能なミラーレスカメラに買った、もしくは買い替えたのに、なぜか写真がつまらない。
そう感じたことはありませんか?

高機能のオートフォーカスは完璧に被写体を捉え、動体を追随し、優れたISO感度は夜の闇さえ昼間のようにたやすく映し出し、強力な手ブレ補正は三脚を持ち出す機会を激減させました。
最新のカメラは間違いなく、常に最新テクノロジーの結晶であり、素晴らしい製品ばかりです。

シャッターを切れば、誰がどこでどのように撮っても、破綻のない「正解」の画像がモニターに映し出される。
それなのに、なぜでしょうか。
シャッターを切るたびに、どこか「作業」のような虚しさを感じることはないでしょうか。

SDカードに蓄積されていくのは、失敗のない綺麗な画像データ。しかし、そこに自分の「意思」や「熱」が乗っていない気がしてならない。そんな気持ちになることはありませんか?
もしあなたが今、「ミラーレスカメラ つまらない」「写真 飽きた」というワードで検索をかけて、この記事にたどり着いたのなら、それはあなたが写真に向いていないからではありません。

むしろ、あなたの感性が素直だからこそ、現代の「過剰に最適化された世界」に違和感を抱いているのに他ならないのです。

今回は、あえてカメラの話から少し離れ、「車」や「音楽」というカルチャーの変遷を紐解きながら、私たちが失ってしまった「生み出す喜び」の正体と、それを再び手にするための具体的な方法について、書いていきたいと思います。

目次

「基準」が奪った自由?車や音楽も同じ運命に

カメラの話をする前に、少しだけ時計の針を戻させてください。
私自身、もう半世紀を生きてきました。なので、この先の記事が若い方にはピンとこない話になってしまうのは覚悟しております(笑)。
自分の子供時代から青春時代を振り返ると、世界はもう少し「デコボコ」していて、そして「自由」だったように思います。

なぜ、現代の車はどれも似た顔をしているのか

例えば、1980年代あたりの車を思い出す、もしくは検索してみてください。
流線形とは言えないスポーツカー、無骨で角張ったセダン…今よりずっと個性的でした。
きっと、当時の自動車デザイナーたちは、空力特性や燃費効率よりも、「美しさ」や「かっこよさ」、「速そうに見えること」、そして「作り手の情熱」を最優先にカタチを作っていたのではないでしょうか。

エンジンの鼓動はダイレクトにハンドルに伝わり、ガソリンの匂いがし、アクセルを踏めば車体が身震いする。そこには「操る歓び」と同時に、ある種の「扱いづらさ」があったはずです。

そして、現代の車を思い浮かべてみてください。
車作りには膨大な「基準」が課せられています。
歩行者保護のためのボンネットの高さ、厳格化された衝突安全基準、極限まで求められる燃費性能、そしてCO2排出規制。これらの厳しすぎる要件をすべてクリアしようとすると、デザインはおのずと「最適解」へと収束していきます。

コンピュータシミュレーションが弾き出した、最も空気抵抗が少なく、最も安全な形状。
その結果、どのメーカーの車も、どこか似通った丸みを帯びたフォルムになり、エンジンの存在感はハイブリッドシステムの静寂にかき消されました。

現代の車は、移動手段としては間違いなく優秀です。故障もせず、快適で、安全です。
しかし、「移動そのものの高揚感」や、デザイナーの「エゴイズム」を感じる余地は、恐ろしいほどに減ってしまいました。「基準」を守ることが最優先となり、自由な発想で「生み出す」ことが許されない時代背景が、そこにはあるのです。

個性を失った音楽。「最初の5秒」の呪縛

音楽の世界もまた、同じく「最適化」の波に飲まれています。

かつてのロックやジャズの名盤を聴くと、そこにはスタジオの空気がそのまま閉じ込められたような雰囲気を感じます。演奏の揺らぎ、小さなミスタッチ、そして例えば囁くような静寂から爆音へと変化する抑揚(音の強弱)、変調など。
ミュージシャンたちは、レコードのA面からB面へという時間の流れの中で、ひとつの物語を構築していました。

しかし、デジタルストリーミング全盛の現代において、音楽制作の現場には新たな「基準」が持ち込まれました。

「スマホのスピーカーで聴いても迫力があるように」と、音圧は不快に感じられないよう最適化され、抑揚を少なくして全域で平坦に編曲された音楽が多くを占めているように思います。
さらに、「サブスクリプションサービスでスキップされないこと」が至上命題となり、曲のイントロは消滅し、開始5秒でサビのようなフックを入れる構成が「ヒットの鍵」とされるようになりました。

ここでもまた、アーティストが「表現したい世界観」よりも、プラットフォームのアルゴリズムに最適化された「消費されるためのコンテンツ」作りが優先されています。

車も、音楽も。
私たちは便利で、失敗がなく、効率的なものに囲まれています。そこには安心感や安定感が漂っています。
しかし、その代償として、「不完全さが生む人間味」「制約がないからこそ生まれる爆発的な創造性」を失ってしまったのではないでしょうか。

カメラもまた「優等生」になりすぎてしまった

さて、話をカメラに戻しましょう。
あなたが手にした最新のミラーレスカメラがつまらないと感じてしまう理由。それは、カメラもまた、車や音楽と同じ道を歩んでいるからです。

撮影者の意思を追い越すアルゴリズム

かつての一眼レフ、あるいはフィルムカメラの時代、写真はもっと「不自由」で「不便」でした。
ピント合わせは自分の目と指先が頼り。露出は経験と勘で決める。フィルムの枚数には限りがあり、現像が上がってくるまで結果は分からない。

そこには常に「失敗」のリスクがありました。
しかし、だからこそ、意図した通りの一枚が撮れた時の震えるような喜びがあったのです。
被写体と対峙し、光を読み、自分の技術で像を結ぶ。そのプロセスそのものが「創造」だったのです。

対して、現代のミラーレスカメラはどうでしょう。
メーカーが競い合っているのは、「失敗の排除」です。

  • 誰でもピンボケしないAF
  • 黒つぶれも白飛びもしない広いダイナミックレンジ
  • ボタン一つで適用される「映える」フィルター
  • レンズごとに設定され、仕上がりを均一化する補正

ファインダー(EVF)を覗けば、そこにはすでに「完成図」が表示されています。シャッターを押す前に、もう結果が分かっている。これは、スポーツ中継の結果を知ってから録画を見ることに似ているのではないでしょうか。

カメラは進化を続け、しっかりとしたAI(人工知能)とアルゴリズムが内蔵されていて、「今のシーンの正解はこれです」と提示してくれる。私たちは、最重要の「構図」こそ自分で決めるのですが、仕上がりに関してはカメラという優秀な「部下」が用意した書類に、ただハンコを押す(シャッターを切る)だけの「承認者」になってしまった、と言えないでしょうか。

これでは、写真がつまらなく感じてしまうのも無理はありません。
私たちは「写真を撮りたい」のであって、「カメラに撮らされたい」わけではないのですから。

あらゆる製品は効率化を求めて進化を続けるものの、趣味の世界において「効率」は必ずしも「幸福」とはイコールではありません。
「不便」の中にこそ「工夫」があり、「工夫」の中にこそ「自分らしさ」が宿る。
その当たり前とも言うべき事実を、最新のテクノロジーは忘れさせてしまうのです。

逆転の発想:不自由さを愛する「オールドレンズ」という選択

では、私たちはどうすればいいのでしょうか。
最新のミラーレスカメラを売り払い、フィルムカメラに戻るべきでしょうか?

もちろんそれも一つの手ですが、フィルムの高騰や現像の手間を考えると、現実的ではない部分もあります。
・・・ちょっと勝手な話にはなりますが「デジタルの恩恵(保存のしやすさ、共有の速さ)」を完全に手放すことには抵抗があるのもまた事実です。

そこで私がこのブログ「じぶんカメラ」で提案しているのが、「ミラーレス一眼カメラ」「デジタル一眼レフカメラ」に「古いレンズ」を組み合わせるというスタイルです。

「欠点」こそが「味」になる世界

「オールドレンズ」とは、主にフィルムカメラ時代(数十年〜半世紀前)に作られたレンズのことです。
現代のレンズ設計では、例えば収差(色のにじみや歪み)は徹底的に排除すべき「悪」とされています。しかし、当時の技術では消しきれなかったその収差こそが、今となっては得難い「個性」となります。

  • 逆光で盛大に入るフレアやゴースト:
    最新レンズならコーティングで消してしまう光の乱反射も、オールドレンズなら「場の空気感」や「眩しさ」としてドラマチックに表現してくれます。
EOS 5D+PENTACON Auto 29mm f2.8
虹色シャワー

周辺減光と甘いピント:
画面の四隅が暗くなり、ピント面もどこか柔らかい。それは、見る人の視線を中央の被写体に優しく誘導し、写真全体に「記憶の中の風景」のようなノスタルジーを与えます。

SONY α7+MC ROKKOR-PG 50mm f1.4
周辺減光

ぐるぐると回るボケ:
背景が渦を巻くような独特のボケ味。現代の優等生レンズでは決して出せない、強烈なインパクト。

SONY α7+ROKKOR MC 50 1.4
ぐるぐるボケ

これらはすべて、工業製品としては「欠陥」かもしれません。
しかし、”表現のツール”として見たとき、これらは最強の「武器」になります。車で言えば、ガソリン車の不安定なアイドリング音のような、人間臭い魅力がそこにあるのです。

マニュアルフォーカスで「撮る」感覚を取り戻す

そして何より、オールドレンズの多くはマニュアルフォーカス(MF)です。
カメラ任せのオートフォーカスは使えません。

ファインダーを覗き、自分の手でピントリングを回す。
像がボケた状態から、じわりとピントが合い、被写体が浮き上がってくるあの一瞬。
「ここだ!」と自分の感覚が決断し、シャッターを切る。

この一連の動作には、オートフォーカスでは気づけない「写真を生み出す手応え」があります。
被写体の瞳にピントを合わせようと必死になっている時、あなたは「作業」をしているのではなく、間違いなく「被写体と対話」をしています。

最新のミラーレスカメラには、このマニュアルフォーカスすらアシストしてくれる「ピーキング機能」や「ピント拡大機能」といった機能が備わっています。
ここは皮肉なことかもしれませんが、「オールドレンズという古いガラス玉」を再び輝かせるボディもまた、実は「(最新の)ミラーレスカメラ」だったりします。

1000円のジャンクレンズが世界を劇的に変える?

オールドレンズとは別に、当ブログ「じぶんカメラ」では、よくジャンクカメラやジャンクレンズの記事を書いています。
リサイクルショップの青い箱の中に、無造作に放り込まれた500~1000円のレンズ。故障しているものも中にはありますが、カビが生えていたり、傷があったりするだけのレンズも転がっています。

しかし、その「打ち捨てられたレンズ」を救出し、マウントアダプターを介して最新のカメラに装着した瞬間、驚くような写真が撮れることがあります。

Nikkor50mmf2 SONY α7
Nikkor50mmf2 – SONY α7

「カビ・クモリのせいで、逆にソフトフィルターのような幻想的な写りになった」
「コーティングが剥がれていることで、夕日が強烈にエモく写った」

これは、数万円の最新レンズ、数十万円する高級レンズでは得られない体験です。
メーカーが定めた「現代の性能の基準」に全く到達しないアウトローな機材たちが、あなたの創造性を刺激してくれる可能性があるのです!

「車も音楽も、基準に縛られてつまらなく感じてしまう」と嘆く私たちは、カメラの世界では自分たちの手でその基準を壊すことができます。
高解像度である必要はない。隅々まで解像していなくてもいい。
「自分の心が動いた瞬間に、自分だけの表現で切り取る」
その原点に立ち返らせてくれるのが、オールドレンズであり、ジャンクレンズなのです。

結論:スペック競争から降りて、「創造」の楽しみへ

もしあなたが、「ミラーレスカメラはつまらない」と感じているなら、それはカメラのせいではなく、「優等生すぎる使い方」をしているせいかもしれません。

車や音楽と同じく、時代はこれからも「最適化」「効率化」へと進んでいくでしょう。それは必然であり、社会を便利にするためには必要なことです。新聞記事や旅雑誌の写真で、周辺減光やフレアが発生させるわけにはいかないですが、趣味の世界である写真においてまで、その基準やルールに従う必要はありません。

カメラボディは最新のままで構わないのです。
ただ1本だけでもよいので、レンズという「眼」を変えてみてください。
そして、AFという「補助輪」を外してみてください。

かつての車が持っていたような、操る喜び。
かつての音楽が持っていたような、魂の震え。
それらを、カメラの世界ではオールドレンズがもたらしてくれるかもしれません。
フリマアプリの「非常に状態が悪い」出品、あるいは近所のリサイクルショップのジャンクコーナーに今日も転がっているかもしれません(笑)。

  • 「綺麗に撮る」ことから、「楽しく撮る」ことへ。
  • 「記録する」ことから、「創造する」ことへ。

少し不便で、最高に自由な写真の世界へ、あなたも足を踏み入れてみませんか?
大袈裟かもしれませんが、オールドレンズ越しに見る世界は、きっとあなたが最初にカメラを手にした時の、あのワクワクするような輝きに満ちているはずです。

一度オールドレンズをひとしきり味わってから、改めて「最新のカメラと最新のレンズ」で撮影してみると、何がどう進化したのか・なぜ進化する必要があったのかを知ることができると思います。

【じぶんカメラ流~オールドレンズ・最初の一本】

「じゃあ、何を買えばいいの?」と思ったあなたへ。
もし迷ったら、「Super Takumar 55mm F1.8」というレンズを探してみてください。数千円で手に入り、アダプターも安価です。
このレンズをつけたカメラで夕暮れの街を覗き、シャッターを切った瞬間、あなたの「つまらない」という感情は、シャッター音と共に消え去っていることを約束します。

【じぶんカメラ流~カメラ・デジタル一眼レフのススメ】

本記事ではミラーレス一眼カメラをおすすめしてきましたが、最後に「デジタル一眼レフカメラ」もおすすめして終わります。

昔のデジタル一眼レフカメラは、中古市場でミラーレスカメラよりずっと安く手に入れることができます。
そして、古いほど最新のカメラとはひと味違う表現をしてくれるので、オールドレンズと組み合わせると面白い写真を生み出してくれますよ。

私の推しデジタル一眼レフは「EOS 5D 初代」です。
古い設計がオールドレンズの良さを引き出してくれます。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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