標準的なレンズより広い範囲を写真に収めることができる、超広角レンズ。皆さんはお持ちですか?
必要かどうか?と問われると、結論”いらない”です(笑)。
…などと言ってしまうと怒られてしまいますね。
でも、普段は本当に必要性が感じられないというのが正直なところ。
とはいえ、一味違う写真を撮りたい!という思いがある方は、持っておくべきレンズのひとつ、と言えるでしょう。
主にダイナミックな風景写真や建築写真には威力を発揮しますし、ちょっと表現にスパイス?を加えてみたいときは役立つこと間違いなし、です。
絵になる場所へ行こう!
この記事では、超広角レンズの魅力を(拙いですが)実写レビュー・作例を交えて紹介し、その価値を再発見してまいります。なぜ超広角レンズを素直におすすめしないのか、その理由も後半でお伝えします。
超広角レンズの基本とその魅力
超広角レンズとは?
超広角レンズは、フルサイズにおける焦点距離が「およそ16mm以上~20mm、ないしは24mm以下」のレンズを指します。この焦点距離のレンズは画角が大変広いので、通常のレンズでは捉えきれない広範囲の風景や建物を一度に撮影することができます。特に風景写真や建築写真において、その広い画角は大きな武器となります。
イメージセンサーごとの違い
上記の焦点距離はフルサイズの場合に限るので、注意が必要です。
お手元にカメラをお持ちの場合、イメージセンサーがどれにあたるかご確認ください。
それぞれの「超広角レンズの焦点距離」は以下の通りです。
- フルサイズ機:「およそ16mm~24mmあたり」
- APS-C機は「およそ10mm~16mmあたり」
- マイクロフォーサーズ機は「およそ8mm~12mm」
例えばAPS-C機にて「焦点距離16mm」で撮影した写真は、フルサイズ機で「焦点距離24mm(CANONは26mm)」で撮影した写真に近い画角となります。
「フルサイズ・16mm」の画角をAPS-C機で求めるなら「10mm」にする必要があります。
フルサイズ機のままを基準にしていると、APS-C機では”超広角感”が薄れて「おや?」となってしまいます。
逆に、フルサイズ機でAPS-C用レンズを使えばさらなる超広角になるのか?というと、そうはなりません。
四隅が蹴られてしまい、暗くなるだけです。
ニコンなどは、フルサイズ機にAPS-C用レンズを装着できる機能がありますが、ちゃんと「APS-Cの範囲」となるようトリミングされる仕組みになってます。
超広角レンズのメリット
画角が広い
超広角レンズの最大のメリットは、そのものズバリ「画角が極端に広いこと」です。
これにより、狭い空間でも広さがあるように見える写真を撮影することもできちゃいます。
また、被写体に近づいて撮影したりすることで、肉眼では得られないような遠近感、いわゆるパースペクティブを表現することができます。
この特性を生かせば、一般的な写真にはない奥行きと迫力を加えることができます。
…メリットは、以上です!
それだけ?と思われるかもしれませんが、それに伴い「迫力ある写真が撮れる」「視界の全体を捉えることができる」といった「関連するメリット」となるため、多角的に挙げられないのです。
他に挙げるとすれば、これはレンズによりますが、「被写体にギリギリまで寄れる」タイプのものが多くあります。
いわゆる「ドアップ(死語?)」で被写体を捉え、背景は程よくボカすと面白い写真に仕上がります。
超広角レンズのデメリット
続いて、超広角レンズのデメリットを挙げますが、やはり「画角が広すぎること」に伴う弊害となります。
歪みが発生しやすい
広い画角を得るため、どうしても四隅に向かうほど歪みが出てしまいます。カメラを斜め上や斜め下にして煽るように撮ると顕著に表れます。例えば建物を見上げるように撮影すると、台形のようになります。
その歪みをうまく生かして、「面白い」と捉えられる場合はデメリットではなくなりますが、やはりデフォルメ感が強まるため、しっかりしたコンセプトがないと、どうしても写真として評価を得ることは難しくなります。
余計なものが入りやすい
また、画角が広いということは「余分なものが写り込みやすい」ということになります。
これはもう注意して撮影するしかありませんが、隣の人の手が入ってしまったとか、手前のゴミ箱が写り込んだとか、必ず経験することになります。後ほど私の失敗例も紹介させていただきます。
雑踏や、にぎやかな観光地など、混み合うような場所では特に顕著に余計なものが入り込むことになるので、かなり注意して撮らないと後から「トリミング必須」という事態に陥ります。
あえてアクセントとして入れてみる、というのもありかもしれませんが、難しいのではないでしょうか。
工夫を迫られる
これは自分自身の課題と言えるのですが、気軽にシャッターを押すと余計なものが入りすぎるので、構図が決まるまで標準レンズや望遠レンズより時間を要します…
決定的瞬間というと大げさですが、シャッターチャンスを逃しかねません。
対極にある望遠レンズは画角が狭いため、最初から「切り取ってくれる」感覚で、逆にもうちょっと周りを入れたいなというくらい被写体が絞られますよね。
超広角レンズは、ちょっと距離を詰めた程度では、まだ要らないものが写ってしまうこともザラです。
実写レビューで見る超広角レンズの実力
さて、私の作例を見ていただく前に…確かな実写レビューを案内させていただきます(笑)。
カメラのキタムラさんの公式サイト「ShaSha」の特集ページですが、こちらの作品が超広角レンズの長所を存分に生かしておられますので、参考にしてみてください。
私の作例は、普通です!とにかく超広角レンズで撮影するとこうなりますよ、といった内容です。
失敗例も含めてアップしておりますので、いろいろな観点でご覧ください。
予防線貼り過ぎでしょ💧
事実なので、伝えておかないといけません🙏
作例は全て「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」で、焦点距離は「10mm」、つまり広角端のものばかりを集めました。
※フルサイズ機で「15mm(キヤノンは16mm)」で撮影した画角と同等となります。
本体は、古いですが「CANON EOS KISS DIGITAL 初代(!!)」です。
風景写真での活用
超広角レンズは間違いなく風景写真を得意とします。目の前に広がる広大な風景を一度に捉えたい!というときに、余裕で仕事をこなしてくれます。
例えば、小高い丘の上から見下ろすようなシチュエーションや、海岸線の撮影では、その広がりを余すことなく表現することができます。
一点透視図法を表現したいときにも強いですね。しかし、こちらも隅っこの木が傾いてしまいました。
常滑の焼き物散歩道です。カメラをできるだけ水平に持つことで、歪みの程度が小さくなります。
こちらは林の中で、あえて煽って撮影しています。鬱蒼として、不気味さが増していると思いませんか?
こちらの池の写真は緑が鮮やかで、個人的には好きな写真です。が、ダメなポイントもいくつかあります。
まずは何といっても左下の「誰かの手」です。撮影時には気づいていないんですよね。
そして、いい雰囲気のおばあちゃん(?)は微妙に遠くて、主役としては弱くなってしまいました。
写真の左側3分の1を切り取ると、多少は良くなりそうですが。
中望遠レンズで狙ったほうが良い写真になったことでしょう…
こちらの作例のように、壮大なスケール感を出したいときもおすすめです。
このときは木の大きさを表現したくて撮影したのを記憶しております。
しかし、下のほうの街灯は倒れそうなほど傾き、お城はピサの斜塔のようですね(笑)。
こちらも左右を切り取って「スクエア」にすると良くなりそうです。
煽って=カメラを斜め上に向けて撮影したときは、より「四隅の傾き」が強く出るので気を付けましょう。
建築写真での活用
建築写真においても、超広角レンズは非常に有用です。高層ビルや大きな建築物を、近距離からでも全体像を捉えることができます。また、建物の内部を撮影する際にも、狭い空間を広く見せることもできるため、インテリア写真にも適しています。
こちらは「名古屋市美術館」です。曲がってみえる、のではなくそういうデザインです(笑)。
建物の迫力が増しているのが分かります。こういったデフォルメ感を楽しめるレンズともいえますね。
空に見える黒い点はゴミではなく鳥です。シャッターを押すタイミングには十分気を付けましょう(笑)。
こちらは建築写真と言えるか微妙ですが、近くても建物全体を撮れるのは大きな特徴です。
こちらもずいぶん横長のお城なのですが、全てを収めてなお余りあるという画角です。
教会を見上げて撮れば、その雰囲気と迫力を増大させてくれます。
天井を見上げているのに、地上の椅子まで丸ごと収められるのは超広角レンズならでは、ですね。
さて、いずれも素直な「建築写真」ではなかったですが、建物全体を撮りたい・迫力を増したいというときには物凄いパワーを発揮することが伝わりましたでしょうか。
アートに強い?
超広角レンズは、クリエイティブな表現にも大いに力を発揮しますので、撮影可能なアートや展示物のイベントがあれば、持ち出してみましょう。以下の作例は「(いろいろあった)あいちトリエンナーレ」の作品群です。
最短撮影距離が短い「寄れるレンズ」であれば、被写体に極端に近づいて撮影することができるので、独特の遠近感を表現することができます。
上の作例は、自転車の後輪がインパクトを放っています。前輪が同じサイズとは思えないですね。
このような視覚効果を加えることができ、通常のレンズでは実現し得ない表現が可能となります。
こちらの部屋(?)も作品のひとつ。カメラを水平にすれば、そこまで歪みは無く「普通の写真」に感じますね。
標準のレンズでは、室内でこの範囲の画角で撮ることは難しいです。
紙箱を並べた作品。四隅は「平行四辺形」になってますが、作品の面白さはよく表現できている気がします。
こちらは蛍光灯で数字を表現している作品。不思議な世界観ですね。
こんな感じで、インスタレーション作品は被写体としておすすめです。
なのですが、基本的に被写体は自分の作品ではなく、あくまで「人の作品を写真に収める」ことになるので、ブログにアップしてよいものかどうか著作権などを確認し、取り扱いには十分注意してください。
超広角レンズの選び方とおすすめモデル
焦点距離と視野角
超広角レンズを選ぶ際には、焦点距離と視野角が重要なポイントとなります。焦点距離が短いほど広い画角を得ることができますが、その分「歪み」も大きくなります。自分の撮影スタイルに合った焦点距離を選ぶことが大切です。
絞り値と明るさ
超広角レンズの「最大開放値」は暗いタイプが多いため、作例をご覧いただいた通り「パンフォーカス」となります。
「ボケ」を期待するのであれば、被写体に最大限近づいて、背景とはしっかり距離を置くのがおすすめです。
もちろん超広角&明るいレンズもあります。キヤノンでいえば「Lレンズ」を選択すれば「F2.8通し」のタイプもありますが、中古であっても予算が跳ね上がります。超広角レンズにどこまで明るさやでボケを求めるか?がポイントとなってきます。
おすすめの超広角レンズ
市場には多くの超広角レンズが存在しますが、その中でも特におすすめのモデルをいくつか紹介します。
今回の私の作例は「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」です。
当時は「隠れLレンズ」とか「神レンズ」と言われており、キヤノン・APS-C専用レンズ(EF-Sマウント)の中でも評価の高いレンズでした。
現在、中古市場では1万円~2万円あたりが相場です。
他に私は所有していないですが、フルサイズ用「CanonのEF 16-35mm f/2.8L III USM」や、Nikonの「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」など、評価が高い高級レンズもあります。
“ときどき使う”というレベルなら、とりあえずお求めやすいレンズで大丈夫です。
以下はキヤノンのEFマウント・フルサイズ対応のもので、中古相場は2万~3万円あたりです。
広角側が20mmなので、前述のLレンズほどの「超広角感」は得られない点、ご注意ください。
超広角レンズを使いこなすためのテクニック
歪みを活かした撮影
超広角レンズの特徴である歪みを活かした撮影テクニックを紹介します。被写体に極端に近づいて撮影することで、ダイナミックなパースペクティブを作り出すことができます。これにより、写真に迫力と奥行きを加えることができます。
定番?の観覧車は大迫力!
フレーミングと構図
超広角レンズを使う際には、フレーミングと構図が本当に重要になります。広い画角を持つため、とにかく余計な要素が写り込みやすくなります。撮影前にしっかりと構図を考え、余計な要素を排除することで、より洗練された写真を撮影することができます。
楕円形の枠をフレームとして活用した例。
大広間をガッツリ全体で捉え、部屋の広さと荘厳さを強調してみました。
こちらの「真上を見上げる写真」も、超広角レンズを入手されたら実践してみてください!
超広角レンズの醍醐味です。
フィルターの活用
超広角レンズは、フィルターを活用することをおすすめします。特に風景写真では、NDフィルターやCPLフィルターを使用することで、空の色や水面の反射をコントロールすることができ、写真の見栄えが良くなるのです。
私のおすすめ、というより超広角レンズに合うのは「PLフィルター」です。
反射を抑える効果があるため、青空の青が強調されて、画角だけはなく色味もダイナミックになって、良い感じです。
以下は、PLフィルターを付けっぱなしにしており、失敗した例です。
実際の青空がこんな色になったのではなく、PLフィルターの影響です。
PLフィルターは自分で回して、色の出方をしっかり確認しながら撮影すると素晴らしい発色を得られますが、忘れて何も考えずに撮ると不自然な色ムラが出てしまうので注意してください。
ちなみに…記事の作例が全体に暗いのは、実は「PLフィルター」をほぼ付けっぱなしにしていたからです🙇
皆様はご面倒でも、情況に応じてPLフィルターの角度を変えたり、外したりしてください。
説得力なさすぎ…💧
まとめ
ユニークな写真を撮りたい方には超おすすめ
いかがでしたでしょうか。
超広角レンズは、その広すぎる画角と、それがもたらす独特の遠近感=パースペクティブを活かした撮影が可能です。
そのため、特徴的な写真を撮るうえでは非常に魅力的なアイテムとなりえます。
風景写真や建築写真、さらにはクリエイティブな表現をしたいときに、その真価を発揮します。
ただし、広すぎるが故に「写真の四隅」への配慮が必須となり、歪みや余計な写り込みに気を付けなければなりません。
他のサイトの作例、プロの作品なども参考にしていただき、超広角レンズの魅力を感じ取り、ぜひその価値を体験してみてください。
素直におすすめできない理由
作例を見ていただいて分かるように、「自然な写真」とは言えないので、簡単に「さぁ皆さんも手に入れてみてください!」とおすすめできない…と私は思ってしまいます。
望遠端(EF-S 10-22mmの場合は「22mm」側)で撮影すれば、一般的な広角レンズの画角に近い=自然な仕上がりとなりますが、それではわざわざ超広角レンズを手にしている意味が薄れてしまいます。
また、その特殊性のためか、超広角レンズは基本的に高額でした。それもおすすめしづらい理由だったのですが、ミラーレス一眼カメラに市場が移行しきった(と言っても過言ではない)昨今、デジタル一眼レフの超広角レンズは中古市場でかなりお求めやすくなりました。
そういう意味では今後、ちょっとお試しで買ってみる、というのはありかもしれません。
自身にとって再発見となりました。
私自身が超広角レンズから長年離れているのですが、今回、記事作成のために過去の写真を選ぶうちに「多少の経験を積んだ今、もう一度じっくり使ってみたい!」と思えるようになりました。
新たな作例や、他のレンズを入手したときは記事として更新したいと思います。
皆様も超広角レンズに限らず、いろいろなレンズでいろいろな写真を生み出してくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。