皆さんは「中華レンズ」、いわゆる「中国製」の(主に)ミラーレス一眼カメラ向けのレンズをご存知ですか?
結論から言えば、かなりおすすめです。
中華レンズの一番の魅力は、「本格的なスペックの単焦点レンズを格安で手に入れられること」です。
具体的にどんなところが魅力なのか、また何に注意すべきなのかを、作例を交えて紹介してまいります。
明るいレンズのボケ力を実感しましょう!
中華レンズとは?
「中華レンズ」とはそのものずばり、中国のメーカーが製造・販売しているレンズです。
レンズを検索したときに、「七工匠」や「中一光学」などの文字を見たことはありませんか?
これらは中国のレンズメーカーの名称です。
カメラ店や家電量販店では見かけませんが、ネットでは普通に購入することができます。
また、日本では名古屋市に本社を置く「焦点工房」さんが、様々なメーカーのレンズを輸入販売しています。
※主に中国製のマウントアダプターを取り扱っています
“とにかく明るい!安い!”単焦点レンズ
某芸人さんのお名前みたいですね。
絶対狙って言ってるでしょ…
中国製の製品は、商品の種類を問わず、基本的に「お安い」わけですが、レンズもご多分に漏れず、です。
特に「明るい単焦点レンズ」は注目に値する明るさと低価格を実現しております。
国産の明るいレンズとなると基本的に高額ですが、中国製レンズはそもそも定価が低めなので、新品でも安く手に入ります。
当然ながら中古市場では、スペックに対して日本製ではありえない価格帯で流通しております。
どこを見たら「明るい」と判断できるかというと、レンズの製品名にある「F○」という箇所がポイントです。○の部分に数字があるのですが、この値が小さいほど「明るいレンズ」ということになります。
一般的なのは「F1.4」~「F2.8」付近ですが、「F1.2」ともなるとボケ量も大きく価格も跳ね上がります。
明るいレンズの最も大きな特徴は、「ボケ量」が豊かになることです。
被写体はくっきり・背景はぼんやり、という写真が、良い雰囲気になるのです。
レンズはF値が小さいほどボケる、そしてF値に比例するように「高額」となってしまうのですが、中華レンズはF1.8やF2など、低めの数字であるにも関わらず、新品で20,000円台、中古で探せば数千円という低価格で手に入れることができます。
なぜ安いのか?
それには中国製というだけではない理由があるのです。次の章のタイトルが答えです。
マニュアルフォーカスが基本です。
中華レンズが安い、主な理由。それは、オートフォーカスではなくマニュアルフォーカスのレンズが基本であることです。レンズに電子機構が全くなく、全て手動で動かさなければなりません。
「シャッターを半押ししてもピントが自動で合ってくれない」というのは抵抗があるかもしれませんが、明るいレンズは高額だから…と諦めているなら、一本は持っておいても損はないはず!です。
しかし、マニュアルレンズといえば、基本的にはオールドレンズを思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか。
私もその認識でした。
しかし中国製のレンズは、ほぼ「マニュアルフォーカスの単焦点」となっております。
純正メーカーが作ることのなくなった、マニュアルレンズ。
この自由さ、ちょっと羨ましい気がします。
もしも純正メーカーが、あえてこの時代にマニュアルレンズを作ったら…
どんなレンズができるのか見てみたい!
オートフォーカスではないため、必然的にレンズのほうで絞り値を決め、ピントを合わせる必要があります。
普段から慣れていれば問題ないのですが、「オートフォーカスのズームレンズ」を主に利用されている場合は、その使い方に戸惑うかもしれません。
マウントアダプター不要!
マニュアルレンズという点では、オールドレンズを彷彿とさせる中華レンズですが、大きな違いは、基本的に「マウントアダプター」が要らない、というところです。
オールドレンズは、主にフィルムカメラ時代のマウントであるため、当然ですがその時代のマウントしかありません。現代、つまりデジタル時代の新しいマウントと繋ぐためには、レンズとカメラ本体の間にアダプターをかますのが基本です。
その点、中華レンズは現在進行形なので、マウントも現役で主流のものがほとんどです。
マニュアルレンズでありながら、マウントはミラーレスのソニーEマウント、といった感じで「オールドレンズ」では叶わない「マウント直」で接続できるのです。
お手持ちのカメラのマウントに合ったレンズを買えばOK!です。
作例
この記事を書こうと思ったきっかけは、中華レンズを買い集めるうちに「フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズ」それぞれで一本ずつ、イメージセンサーごとのレンズが揃ったためです。別に狙って揃えたわけではなく、中古でちょうどお手頃価格のレンズがあったから、ですが。
ということで、ここから作例を交えて、各レンズについてレビューさせていただきます!
作例について
作例に入る前にもうひとつ、個人的な話になりますが「撮影設定」について事前にお伝えします。
こちらの作例群は、私の個人的な趣味が盛大に反映されております(笑)。
具体的には、以下の2点です。
- カメラ側の撮影設定を「絞り優先モード」にする
- レンズ側の絞りを最大に開放する
カメラの絞り優先モードは、ダイヤルまたは設定画面で撮影モードを「A」とか「Av」にセットします。
レンズ側の「絞り値を最大にする」とは、レンズの製品名にあるF値にすることです。
これにより、レンズの絞り羽根が一番開いた状態、つまりボケ量が常時最大となり、そのレンズの描写力を確認することができるのです。
絞り優先モードについては、以下の記事で “より熱く” 語っておりますので、ぜひご一読ください!
フルサイズの中華レンズ
最初はフルサイズのレンズです。85mmなので、「中望遠の単焦点レンズ」です。
見慣れない文字「ZHONG YI」。「中一」の中国語での言い方ですね!
中一光学 CREATER 85mm f2 | |
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センサーサイズ | フルサイズ |
最短撮影距離 | 0.85m |
レンズマウント | ソニーEマウント ※他のマウントも有り |
中望遠レンズの代表格でもある、85mmのレンズはポートレートに最適で、一般的には高い部類に入ります。
最大開放値「F2」は”明るい”部類に入ります。
最初の作例は日に当たるネコです。毛の柔らかさが伝わってくる、素直な描写ですね。
これ、僕の実写版です!イケメンでしょ😼✨
こちらは木漏れ日の中の新緑…と呼ぶには虫食い葉ですが💦最大開放の状態でも、被写体の葉は十分シャープに感じます。
木漏れ日が点光源となり、「玉ボケ」になっていますが、こちらも自然なボケ方ですね。
二重になったり、ぐるぐるしたり、クセ玉という感じはなくて、全ての面でそつのない仕上がりとなる印象です。
こちらの作例は、周辺減光が発生してますね。やっとクセが感じられました(笑)。
背景が単色だと、四隅が少し暗くなっていることが分かります。最新のレンズとカメラは、こういったレンズのクセが出ないように設計上でもデジタル計算上(補正)でも工夫されているのですが、マニュアルレンズなので補正されません。私はそれが逆に味のある仕上がりと感じられるのですが、いかがでしょうか。
ということで、全体的には無難な写りで、悪く言うと面白みに欠けるレンズかもしれませんが、条件によっては少しオールドレンズな仕上がりになることも分かりました。
国産レンズと比較しても、そこまで遜色のない、価格の割には十分な描写性能を持つレンズ、ということが伝わりましたでしょうか。
比較製品:ソニーFE 85mm F1.8
そもそも「85mm・F2」というスペックが珍しいため、他の製品と比較しづらいという前提はありますが…
同じEマウントで、スペックが近いソニー純正品を比較対象としました。
純正品はオートフォーカスですが、価格に約3倍の開きがあります…
APS-Cサイズの中華レンズ
続いては、APS-Cサイズのレンズを紹介します。
ここからは「フルサイズ換算」も合わせてお伝えします。
こちらのレンズは「35mm f1.2」。フルサイズ換算すると「56mm」となります。
また、最大開放値が「F1.2」と大きいので「最初のレンズより明るいのか?」というと、これもイメージセンサーがAPS-Cなので、単純にそうなるわけではありません。
ただし、絞り値もフルサイズ換算できるか?というとNOです。
その代わり「ボケの具合」から、おおよそ当てはめることはできます。その結果…
「【APS-Cサイズ】のカメラで【35mm f1.2】のレンズ」で撮影した写真は、
「【フルサイズ】のカメラで【56mm f1.8】のレンズ」で撮影した写真と画角・ボケ量が近い、ということになります。
ちなみに「56mm」などという単焦点レンズは存在しないので、「55mm」の単焦点レンズが最も近いですね。
カメラ初心者を悩ませる「フルサイズ換算」。頑張って身につけましょう🔥
七工匠(7Artisans)35mm f1.2 | |
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センサーサイズ | APS-C |
焦点距離(フルサイズ換算) | 35mm (56mm) |
最大開放値 (フルサイズボケ量) | f1.2 (f1.8相当) |
最短撮影距離 | 0.35mm |
レンズマウント | キヤノンEOS-Mマウント ※他のマウントも有り |
道端に自生していた雑草をF1.2で撮影。雑草にしては綺麗だな…と思ったら、ランタナというお花だそうです。
ひとつひとつは小さな花です。背景の豊かなボケにより、可愛らしさが増しているように思います。
ボケ感は少し固い感じがするでしょうか。
被写体がぼんやりしているのは私の視力のせいでピントがずれたため、です…🙇
どれかの花びらには合ってるはずです!
続いて、青もみじです。実際の景色より明暗がハッキリ出ていて、スポットライトを浴びているような感じになりました。
一番明るい葉は白飛び、暗い部分は黒潰れしている、と言われるとそれまでなのですが、この雰囲気が好きなのであえて作例としてアップしました。この作例は極端かもしれませんが、光と影がバランスよく表現されている写真は、より印象的になるものです。
続いては、葉っぱと木漏れ日ですね。こちらの玉ボケは「バブルボケ」に近いでしょうか。
光と影のコントラストを捉えるか、被写体をクッキリ浮かび上がらせて背景のボケを生かすか、その二点を気を付けるだけで仕上がりは大きく変わってきます。
比較製品:ソニー E 35mm F1.8
こちらのレンズと同一スペックのレンズは見当たらなかったため、ソニーの35mm APS-C 単焦点レンズを挙げてみました。
紹介した中華レンズとマウントも異なるのが申し訳ないのですが、やはり国産品の価格と大きな開きがありますね。
F値はこちらのほうが明るくないので、ソニーでF1.2タイプが発売されたら、10万円台になるかもしれません。
マイクロフォーサーズの中華レンズ
最後は、マイクロフォーサーズのレンズです。
こちらのメーカーは「MEIKE」といいますが、焦点工房さんでの扱いはないようです。
フルサイズ換算すると、焦点距離が2倍になるので、50mmです。
「フルサイズ」のカメラで、「50mm f3.5」のレンズを使っているのと近い写真が撮れます。
MEIKE 25mm f1.8 | |
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センサーサイズ/マウント | マイクロフォーサーズ |
焦点距離(フルサイズ換算) | 25mm (50mm) |
最大開放値 (フルサイズボケ量) | f1.8 (f3.5) |
最短撮影距離 | 0.25mm |
砂利道で、水たまりに映った高架の線路です。
水たまりが揺らいでいるので分かりづらいですが、手前のほうの高架にピントを合わせています。
こちらはトヨタ産業記念館で、昔の機材とガラスに写り込むサッシです。
昔の工場をイメージして、白黒で撮影しています。
窓枠に焦点を当てているので、奥に見える工具類が「前ボケ」の役割を果たすという、少し不思議な雰囲気になりました。
それにしても…レンズの魅力をお伝えするにはちょっと微妙な作例なので、後日追加します🙇
比較製品:OLYMPUS M.ZUIKO 25mm F1.8
こちらは全く同じスペックのレンズが存在します。
1点目、2点目のレンズより低額ですが、それでも中華レンズの2倍以上ですね。
3つのレンズの共通点
入手したレンズの共通点、というより「デメリット」として、最短撮影距離が長い=あまり被写体に近づけない、という特徴があります。
最短撮影距離を超えた被写体にはピントが合いません。
スマホのような感覚で被写体に寄って撮ろうとすると、思ったより近づけなくてストレスになるかもしれないので、「マクロ撮影🌷」がお好きな方にはおすすめしづらいレンズ、ということが言えます。
購入後、撮影する前の準備
さて、いざ「買ってみようかな」ということで、お手元に中華レンズが届いたら…
なぜかシャッターが押せない!ということが起きるかもしれません。
その場合の対処法をお伝えしておきます。
※本章の解説は、オールドレンズを含むマニュアルレンズ全般に適用可能です
「レンズ無しレリーズ」⇒「する」
マニュアレンズ無し、カメラとの「電子接点」がないため、「レンズ無しレリーズ」という機能を「する」にする必要があります。
そうしないと、レンズを装着したことをカメラは認識できず、シャッターを押すことができません。
耳慣れない言葉ですが、ざっくり言うと
「レンズが付いてなくてもシャッターを押せるようにする」
という機能です。
初めて買って装着まではしたものの「シャッターが切れない!」というときはレンズ無しレリーズ機能の設定を確認してみてください。シャッターが切れないほとんどの原因はこれだと思います。
「ピーキング」⇒ON
「ピーキング機能」とは、被写体にピントを合わせるためのヘルプをしてくれる機能で、ファインダーや背面液晶画面に「フォーカスした箇所を色付け」してくれるものです。
こちらの例は「SONY α7」の設定画面です。レベルと色を選ぶことができます。
液晶画面はこんな感じです。レースのカーテンが赤く染まっているのではなく、ピントが合っていることを意味します。
お手元にカメラがある方、これから購入する方は参考にしてみてください。
まとめ
以上、中国製レンズを駆け足で紹介してまいりましたが、いかがだったでしょうか。
国産レンズでは高額な単焦点レンズが、新品でも安く購入できる中華レンズは、お気軽に明るいレンズの魅力を知るのに十分な能力を持っています。
ただし、「基本的にオートフォーカスできない・ズームできない・被写体に近寄って撮れない」など、短所もいくつかあるので、どこまで割り切って使うことができるか?がポイントとなるかもしれません。
それでも、明るい単焦点レンズの魅力を知ること、またマニュアルでピントを合わせる「撮影の原点」を味わい楽しむのもまた、醍醐味と言えます。
この記事で取り上げたレンズ以外にも、たくさんの中華レンズがありますので、ぜひご自身で探していただき、魅力を感じたレンズがあれば、ぜひ購入してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。